夏休み
「以上で一学期終了!夏休みもほどほどに勉強してたくさん遊べよ!」
「「はぁーい!」」
先生の一学期終了宣言を合図にクラスのみんなは大声とともに立ち上がった。
「私たちも行こうか」
朱音さんは明日から夏休みが始まると言うのにいつもと変わらぬトーンで帰宅を提案してきた。
「うん!」
僕は夏休みが始まるうきうきを隠せずに元気よく返事した。別に学校が嫌いとかそういう訳じゃないが、いつもと違う非日常が始まると思うと男の端くれである僕はワクワクしてしまう。
「朱音さんは夏休み楽しみじゃないの?」
僕のハイなテンションで発せられた声が、みんな勢い良く出てしまったため無人になった教室に響く。
「楽しみじゃない訳ではないけどさぁ。何か寂しいじゃん」
朱音さんは普段のニタっとした笑みを浮かべながら言った。
「え?何で?授業はないし、何より朱音さんの私服見れて良い事づくめじゃん!」
僕はハイなテンションの影響で妄想していた朱音さんの私服の事をそのまま曝け出してしまった。その事に気付いた時には時すでに遅し、僕は申し訳程度に空いた口を手でふさいだ。
「会う事前提なんだ……」
「え?なんて?」
僕はからかわれる事を覚悟して待っていたので少し拍子抜けしつつ、聞こえなかった事について言及した。
「いや、龍ちゃんがそんなに私の私服楽しみにしてるなら頑張らなきゃなって思って!」
朱音さんはニタっとした笑みにからかう様ないつものトーンで言った。
「ちがっ!それは言葉のあやいというか……」
完全に安心しきっていた僕は突如いつものキレ味を発揮してきた朱音さんになすすべもなく赤面してしまった。
「え〜!私の私服見れてラッキーってはっきり言ってたけどな〜」
朱音さんは追い討ちとばかりに僕の声真似をしながら先程の僕の発言をリピートしてきた。
「あ〜、やっぱり夏休み楽しみになってきちゃったなぁ!」
僕が本当の事を言われ何も言い返せずにいると、もう許してくれたのか朱音さんは夏休みの事に話を替えてくれた。
「そ、そうだよね!夏休み楽しみだよね!」
「龍ちゃんは夏休みじゃなくて私の私服が楽しみに何でしょ?」
朱音さんはやはり許してくれなかったのかまだ私服の事でからかってくる。
「うそうそ、でも夏休みいっぱい遊ぼうね?」
朱音さんは僕が赤面してそっぽを向いてるのを確認すると、やっとからかうのをやめてくれたのか再び話を夏休みに戻した。
「う、うん」
今年の夏休みはいつもと違う夏休みになりそうだ。