少女漫画
『私、やっぱりあんたの事好き!』
『俺もだよ』
そう言うと二人の男女は互いに抱き合った。完結!!松平小太郎先生の次回作にご期待ください。
『いい話だったなぁ』
僕は携帯をスワイプしながら松平ズラブの感想を呟いた。僕は基本紙媒体派なのだが、ラブコメや最近はまっている少女漫画などの思春期の男子が家族に見られると少し恥ずかしい作品は電子書籍で買う様にしている。友達にも見られたくないので基本的に教室では読まない様にしていたのだが、今日は松平ズラブの続きが気になりすぎて授業に身が入らなかったので休み時間に読んでしまった。
『へぇー、龍ちゃんも少女漫画読むんだ』
さっきまで居なかった僕の席の後ろから携帯を覗く様な姿勢で朱音さんは囁いた。
『フェッ!?』
僕が少女漫画を読んでる所を見られた事による羞恥心と突然声をかけられた事による驚きで奇妙な声を上げてしまった。
『この話の主人公のりっちゃん真っ直ぐだし可愛げあって良いよね。やっぱり男の子ってそう言う一途な子が好きなの?』
朱音さんはニタと笑いながら瀕死の僕に追い打ちをかけてきた。
『別に好きじゃないよ!』
ライフがもうゼロの僕は赤面させながらも最後の足掻きで顔をそっぽに向けた。
『じゃどういう子が好きなの?』
僕の抵抗虚しく朱音さんはどんどんと逃げ道をなくしてくる。
『人それぞれだと思うけど、僕の友達は意外と小悪魔っぽい子の方が好きって言ってたよ』
『へぇー、そうなんだ。じゃそのお友達とは仲良く出来そうだね。今度紹介してよ』
朱音さんはニタニタと笑いながら顔を近づけてきた。
『機会があったらね』
僕は誤魔化す様に口笛を吹きながら汗をだくだくに流した。
『ところで私はね、女慣れてした男の子よりピュアな子の方が好きだよ』
朱音さんは近づけてきた顔を僕の耳元でとめ囁いた。
『ソウナンダ』
僕はその不意打ちに顔から湯気を出し、口調も片言になってしまった。
『あと、次の時間体育だから早く着替えないと遅れちゃうよ』
体操着姿の朱音さんはそう言うと足早に廊下へと姿を消した。
『それさっきに行ってよ!』
僕の大声が無人の教室に響く。
結局授業には間に合いました。