嫉妬
「夏休みもあけた訳だが、明日からは授業もあるから忘れ物ないようにしろよ!じゃ起立。礼」
担任の言葉とは一致しないだれた声を号令に夏休み明け一日目の学校は終わった。
今日は朱音さんと帰る予定だけど、人気者の朱音さんはクラスメートに囲まれている。
僕は囲まれている朱音さんの話が終わるのを待つがてら、ホームルームから行きたかったトイレに足を向けた。
流石にもう話終わったよな、でも女子の話は長いしなぁ……。
僕がおそるおそる教室のドアに手をかけると案の定まだ話をしているのか、教室の中から女子の声が聞こえてきた。
「所でさ、朱音ってあの龍生……だっけ?あの地味な子、とまだ付き合ってるの?」
「うん」
「もったいない、朱音だったらもっといい男と付き合えるのに」
「そんなこと……うん?」
「どうした?」
「ちょっとラインが来ただけ」
「ふーん」
(龍生:お腹痛いので友達と先帰って)
「ハアーーーーー」
僕の長い溜め息が屋上のまだ暑さが残る風と共に飛んでいく。
そうだった……、いつも一緒にいたから忘れていた。
朱音さんは可愛くて明るくてクラスの中心。
片や僕の顔は平凡、特に性格が面白い訳でもなくクラスでも地味。
そりゃ吊り合いがとれてる訳ないよな。
「ハアーーーーー」
本日二回目の溜め息が吐ききれない思いの代わりとばかりに出た。
だめだだめだ、気持ちを切り替えるよう頬を叩き、もう誰もいないであろうクラスに足を向けた。
「流石にもういないよな……」
帰れと言っといて、いざ帰られると少し悲しいなぁ。
僕は朱音さんの下駄箱に靴が入ってないのを確認した後、自分の靴を履き替えた。
「龍ちゃんトイレ長い」
「わっっ!朱音さんどうしているのいるの!?」
「どうしてって、今日一緒に帰る約束したじゃん」
「そ、そうだけど……、ってか頬赤くなってるけどどうしたの!?」
「ちょっと喧嘩しちゃって」
喧嘩しちゃってって、まさか……僕のことで……?
「それ仲直りした?」
「まだだけど……」
「じゃ仲直りして!あともう一緒に帰るの止めよ」
僕はそう一人で話を終わらせると走り出した。
最低だ……。勝手に比べて自己嫌悪して、彼女に助けてもらったらそれが何か許せなくて、それで彼女を引き離して、助けている気になってる。
今日また自分の事が嫌いになった。