容疑二 心柱 "守ルベキ物"
この設定が呑みこまれないよう頑張る次第です
晴樹は幼い頃に特別何かを経験しているわけではない。
それ故に、良くも悪くも本能的な行動をとってきた。
しかし、晴樹には一つ大きな柱がある。
血を流したくない。
この意思に大きな意味はない。
ただ晴樹の我儘である。
決して手術はしないと心に決めているし、注射もこれでもかというほど抵抗してやっと受けるか受けないかの段階まで持ってくる、という図太い精神も持ち合わせいた。
そして、その意思の核たるものは。
絶対に人を殺さない。
これだけは、一生を通して守り続けていかなければならない。そう晴樹は決めている。
人を殺すことなんて、普通に生きていればないじゃないか。
そう思うかもしれない。確かに、その観点で言えば人殺しは起きない。
しかし、晴樹は違う。
見殺し。これこそが一番の罪であると晴樹は思う。
晴樹は。
世界中の貧困などから人々を救い、生きるすべを与える聖人ではない。
武術を身に付ける、完全無敵のボディーガードでもない。
素晴らしい頭を持ち、どんな病さえ直してしまう医者ではない。
だからこそ。単純に思うのだ。
手を差し伸べることに自分の人生の意味があるのではないかと。
あくまで個人の主観であるが、晴樹はその太い意志の元で、人生に何かを見出そうとしている。
烏滸がましいかもしれない。
醜く、イタイ少年かもしれない。
でも、そうやって自分を決めつけて、いっつも自分を鏡で見ていないと保てない奴らよりも、つべこべ御託を並べず自らの手を差し伸べるその決意こそが大事であると考える。
何かを見つけることが出来なくたっていい。
ただ自分の道筋を振り返って自己満足できれば、それでもいい。
太いようで、薄っぺらい。それでもいい。
単純な、それでいて底が見えない決意。
先ほど晴樹が吼えたのもこれゆえか。
守る、と決めた少女を軽く死なせてしまったと思ったからか。
それ以前に。
友人に手を出したアールダに対して許さない、と口に出したのもそれゆえだろうか。
答えは晴樹の本心さえも分からない。