無双するのは転生者の役目じゃない
いざ、戦場へ!
「な、なんだこいつは!」
「償いの弾」
私は無造作に湧いてくる鎧で武装された敵を黒い弾でどんどん倒していった。
「やはり分身無しで一人だと結構時間がかかってしまいますね」
「この……化け物が!」
鎧で武装された敵の一人が雨のように降り注ぐ黒い弾を死んでいった味方を盾にして私の元にたどり着いた。
そして片手に持っている剣を振り上げ私を一刀両断しようとする。
「……償いの爪」
その剣は私に届くことはなく逆に剣を持った敵を切り裂いた。
「す、すげぇ……魔王部隊の奴らか?」
一人の傭兵が私の元に近づいてきた。
「いえ、私はただの酒場のマスターですよ。もし宜しければこの戦いが終わったら寄ってくださいね」
「ただの酒場のマスターか……こりゃ俺らも負けてられないな! 行くぞてめぇら!」
どうやら傭兵達の士気が上がったようですね。
「しかし……妙ですね」
いくら私が敵を倒しても無尽蔵に湧き上がる。
それに何故か死体が残らない、既に五十は倒したはずなのですが……見る限り倒れているのは十五ぐらいですね。
「何かのスキルでしょうか……む」
「消え去れ! 穢れた者共よ!」
また一人あの黒い弾の雨を抜けて来るものがいた。
まるで攻略法を覚えたように味方を盾にしている。
「あの酒場のマスターを守れ!」
弾丸の雨を抜けてきたものを傭兵達が対処する。
とても安定しているのですが……この違和感。
何故か敵の勢いがまったく衰えないなんて……
「悪いマスター! 二人そっちにいった!」
二人の敵が剣を振り上げる。
「……償いの爪」
二人の敵はドサッと地面に倒れる。
「……敵の部隊は斬ることしか出来ないのでしょうか? なぜこんなに動きが単調なのでしょう」
私は倒れた敵を見た。
すると倒れた敵は鎧ごとスライムのようにドロッと溶けて蒸発するように消えていった。
「これは……」
「酒場のマスター! こいつはいつまで出てくるんだ!」
「無尽蔵ですか……と、なるとどこかにスキルの使用者がいるはずですね」
これは一気に畳み掛けるべきなのでしょうか?
……久しぶりの町のピンチですね。
若い頃を思い出しますね。
「……嘘つきの門番」
手が黒い剣のように変化する。
「傭兵さん、ここは任せますよ……嘘と真実」
私は五体の分身を出現させる。
「あんたが離れたら俺たちはって……マジであんたは何もんなんだ?」
「私は酒場のマスターですよ」
分身を一体ここに残して私と分身四体で敵に向かって突っ込んでいった。
「な、なんだ!」
「うわぁぁぁ!」
私は剣に変化した手を無造作に振り回す。
それだけで敵は簡単に死ぬ。
いや、死んだかどうか分かりませんが。
「さて……気分が乗ってきましたね」
こんな大軍と戦うのは"怠惰"を背負っていた時以来ですね。
「だ、ダメだ! イシカワ様に報告だ! 撤退だ!」
一人の敵が大きな声で叫ぶ。
「そんなつまらないこと言わないで下さいよ」
私は叫んだ敵を変化した手で首を跳ねる。
「……嘘だらけの世界」
私を中心に黒いドームが出来上がる。
「さて……ここから出ることは出来ませんよ」
敵は少し戸惑っていた。
「く、聖王様のために!」
しかし、一人の敵の兵士が突然突っ込んでくる。
「聖王様のために!」
それから戸惑いは消えて私に向かって突っ込んでくる。
「その覚悟……素晴らしいですよ」
私は作り出した分身と共に大軍を壊滅させようと向かっていった。
「ふむ……まぁこんなところですか」
ついつい興奮してしまいましたね。
「本当であれば死体の山ができるはずなのですが」
ほとんどが蒸発するように消えていった。
「さて、門番の能力を解除しますか」
剣になっていた手は元に戻った。
そして黒いドームもどんどん縮まって、消えていった。
「さて、スキルの使用者を探しますか」
私はそう言って胸ポケットに入っているMP回復薬を飲んだ。
「こんなにずっとスキルを展開しているとは……相当な使い手なのでしょう」
私は瞬間移動をしようとした時、
地面が今までにない程揺れた。
「これは……一体」
そして私の目の前に山のようにでかい巨人が現れた。
「なぜ……ここにこいつが?」




