イレギュラーはあっても当然
戦争勃発中!
「カミシロー」
「どうしたの?」
「やっぱり壁に登りに行ってもいいー?」
雑貨街の防衛を任された俺達は……ハッキリ言って暇だった。
壁の外は爆発音や怒涛など飛び交っているのだが……こっちは物音が全くしないのだった。
「あんまり身を乗り出さなければいいと思うよ」
「分かった! すぐに戻ってくるね!」
さっきまで怖いと言っていたのになぁ。
俺もギターでも弾いていようかな。
俺はギターとアンプ、そしてエフェクターなど諸々を取り出してギターを弾く準備をする。
――スキル波動を使用しますか?
今は使わないかな。
――了解しました。
最近スキルが有能になってきたのか、使用の確認が一度になったのだ。
俺がギターを弾く準備をしているうちにフィルはもう壁の上まで登っていた。
壁の外はどうなってるんだろうなぁ。後でフィルに聞いてみよう。
フィルは一瞬壁から顔を覗かせた。
そして直ぐに降りてきた。
「カミシロ……凄かったよ」
「まぁ、爆発音とかしてるからね」
フィルはいつもの目のキラキラした感じがなかった。
まぁ俺自身が外の様子を見たわけじゃないからなんとも言えないけど……
一応戦争だから、やっぱりフィルにも思うところはあるんだろうな。
「やっぱり……怖かったよ」
フィルの耳や尻尾が下を向いている。
「そっか……」
俺はギターを弾く準備を完全に整えた。
「なにか弾こうか?」
別に俺は戦争に参加出来ないけど……せめてギターでも弾こう。
「うーん……いつものがいい」
いつものって言うとたびたちか。
「爆発音に負けないように頑張って弾くよ」
俺はアンプがハウリングしない程度にボリュームなどを上げた。
少し不謹慎ではあるかもしれないが……俺の曲がレクイエムのようになっていることが嬉しく感じてしまった。
爆発音がする中、俺は何曲か弾き語りをした。
まぁ歌の方は届いて無いかもしれないけど……ギターの音位は壁の外の人達に届いているかもしれないな。
「こんな時にカミシロの曲を聴けるって、なんだか凄いね」
「確かにね」
「カミシロが曲を弾いてる時、少し外の怖い音が小さくなってたよ」
フィルは先程とはうって変わり耳をピョンと立てていた。
「確かに……なんだか壁の辺りから声とか聞こえなくなったね」
もしかしたら勘違いかもしれないけど。
「このまま何事なければ……」
すると地震みたいな揺れが起きた。
「うわ!」
激しい揺れで立っているのがやっとだった。
「カミシロ! あれ!」
フィルが狐の姿になりながら壁の外を見ている。
「あれは?」
壁の外にはゴツゴツとした岩のような巨人……ゲームだとゴーレムみたいな奴が出現した。
そして同時に揺れは収まった。
「……ロペさんと母様達、大丈夫かな?」
フィルは心配したような目で俺の事を見てくる。
「あのロペさん達だよ。きっと大丈夫だよ」
ハウリングとは
本来はマイクの音に雑音が入る事を指すので明確には違うのですが……
音がキィィンとならないようにって感じです
紛らわしくて申し訳ないです