短剣の意味
ラルとの戦闘終了!
「カミシロ先輩ってどうなてるんっすか?」
俺はラルと戦闘が終わった後、更衣室の近くにあったベンチで昼食をとっていた。
今回はキャベチの炒め物ではなく、メルさんお手製のおにぎり……じゃなくて握りマイというんだったな。
海苔は巻いていないがなんだか塩の風味がする塩むすびなのだが。
どうやら塩は使っていないらしい。
何を使っているか聞きたかったけど……ソルさんはすぐどこかに行ってしまったから聞けなかった。
まぁ別に気にしないけどね。
俺は握りマイをほおばる。
「カミシロ先輩聞いてるんすか?」
「聞いてるよ」
ラルがちょっと目を細めてくる。
ちなみにフィルはメルさんと買い物に行ったようだ。
「まぁ今回はたまたまだったしな」
「でも……自分の最大の技があんなにあっけなく敗れるとは思ってなかったっすよ」
ラルは残念そうな顔になる。
そのせいか少し耳が下を向いている。
「それにカミシロ先輩は魔装があってこそだと思ってたのに、悔しいっす」
うーん、本当に悔しがってるしな。
こういう時はどうしようか。
「まぁ、そういう日もあるよ」
「ま、そうっすよね」
するとラルは何事もなかったかのようにケロッと立ち直り、握りマイを食べ始めた。
心配損だなぁ。
まぁ立ち直ってくれたのならいいんだけど。
実際相当悔しいだろうな。
パッとでの奴にやられたんだから。
「次は絶対負けないっすよ!」
そう言ってニッと笑う。
ラルのこういうところはすごいと思うな。
俺はこんな風な態度をとれるのかな。
「……ラルってすごいな」
「そうっすか? まぁ本気出したら誰にも負けないっすよ!」
ラルが意気揚々と宣言する。
案外こういう自惚れは大切なのかもなぁ。
「あ、そういえばラル。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「なんすか?」
「あのさ、男女同じ短剣を持ってるってなんか特別な意味ってあるのか?」
そう、ロペさんに聞こうと思ったら聞けなかったし。
ずっと気になっていたんだよな。
「えっとっすね。種族にもよると思うっすけど、大体は結婚の約束らしいっすよ」
マジか。
「意味は戦争で二人が別れても同じ武器を持っていればまた会えるって意味らしいっすよ。自分の母ちゃんがそう言ってたっす」
ほぉ、そういう意味があるのか。
花言葉的なやつかな?
って関心してる場合じゃないんだけどな。
「まぁ今時本気にしている人とかあんまりいないんじゃないっすかね」
なんだ、なら安心……って反応じゃなかったしな。
まぁ今は本人いないけど、俺はどうすればいいのかな。
「でもよく知ってるっすね」
「あぁいや」
ここでフィルとのことを言うのは……前世では犯罪に近いし。
何よりマランさんが知ったら……怖いしな。
「ラル、そろそろお昼休憩は終わりにしますか」
ソルさんが俺達の近くにくる。
「う、ほんとにやるんすか?」
「これ、ポーションです」
そう言ってソルさんは青い色をした飲み物をラルに渡した。
「さて……行きますか」