保護者がいないと夜更かししたくなるよね
何だかドギマギしてるみたいですね
俺は水浴び部屋に入って相変わらず適温なシャワーを浴びた。
ちなみにアンガー・ウルフにやられた傷には十分に注意を払っている。
フィルのおかげかは分からないけど痛みは引いているしな。
ただここで調子に乗ると悪化させるから傷跡があるところにはできる限りシャワーを当てないようにするけど。
てか噛まれたの今日の出来事なのか。
ほんと、こっちに来てから一日が濃すぎるなぁ。
俺はそんなことを注意しながらシャワーを浴びた。
「出ましたよー」
俺は水浴び部屋から出た。
「あ、カミシロ! さっきロペさんの分身? から手紙がきたよ」
ロペさんの分身?
「えっとロペさん本人じゃなくて?」
「うん。いきなり瞬間移動してきたと思ったら”私は分身です。これを受け取ってください”って言って手紙を渡してまた消えちゃった」
「そうなのか」
分身がよくわからないけど、まぁ戦争だって言ってたしやっぱり大変な環境なのかな。
「それで、手紙にはなんて書いてあるんだ?」
俺はこの世界の文字が読めるわけではない。
ほんとは読めるようになりたいけど、忙しいかったからなぁ。
「ええっとね。お金は地下のキッチンに置いてあります。管理はカミシロ様に任せるので朝ご飯などしっかりと食べるようにしてください。ここの光の消し方は二回拍手をすると消えます。……だって」
「ならご飯とか頑張んないとな」
俺は火打石で火を点けることはできないしな。
こればかりはフィルに手伝ってもらわないとな。
「ってことは、夜更かしできるね!」
フィルは目を輝かせている。
こういうふうに親とかいない時とか……俺も夜遅くまでゲームしてたしな。
全うな大人なら怒ったりしなきゃいけないんだけど……まぁたまには夜更かしぐらい、いいんじゃないかなって思うからね。
「たまにならいいよね」
「うん! なにしようか?」
こういう時、前世ならゲーム大会したりするんだけどな。
「あー、なにか遊べるものってある?」
レトロなゲームだと……トランプとかそういうのになるのかな?
「うーん……ロペさんの家にそういうのあるのかな」
フィルは洋服がしまってあるクローゼットの中を探している。
確かに……ロペさんの家って余計なものがあんまり無いというか。
「うーん……やっぱりないね」
「そうか。てか普段こういう時って何やるんだ?」
「え? ジェラルさんとかは絵柄と数字が書かれたカードを使ってよく賭け事をしたりするって言ってたよ」
やっぱりトランプ的なやつはどこでもあるのか。
「フィルは何やるんだ?」
「私はロペさんみたいに絵を描いてるよ」
フィルはクローゼットの奥の方をゴソゴソと漁って……数枚の紙を取り出した。
「こういう感じなんだ」
フィルは少し恥ずかしそうに見せる。
描いてある絵はスライムだったり今日戦ったゴブリンだったり……
まぁ普通に上手いな。
アニメとかの絵じゃなくてリアルを追求した絵って感じだな。
あんまりこういう絵を見たことがないけど……
「普通に上手いな」
「そ、そうかな。ロペさんにはまだまだですよって言われるけど」
まぁあの人誰かにものを教える時には妥協しないって感じなんだろうな。
「まぁ俺に絵のことは分からないけど。普通に上手いと思ったよ」
「そっか。ありがとう」
フィルはそう言ってイソイソとクローゼットの奥に絵をしまった。
俺は勿体ないと思うけど……こういうのって初めて公開するのって嫌な緊張あるしね。
それにもっといいものを描いてからって感じなのかな。
まぁ作詞と同じもんなのかな?
「さて……なにしようか?」
「あ、歌の練習しようよ!」
「おー、いいね。やろうか」
俺とフィルはいつもより長く歌の練習をした。
その後、フィルは疲れたのか眠そうにしていたので俺は拍手を2回して部屋の電気を消した。
さて……明日も頑張らないとな。




