部隊の人と顔合わせ
やっとギター登場!
「持ってきましたよ」
俺は地下室からギター一式を持ってきた。
「これが魔装ですか……でもあんまり特殊な感じがしないです」
メルさんがまじまじと俺のギターを見ている。
「これは……本体ではなく鞘のようなものですか? カミシロさん」
「はい。本体は……これです」
俺はギターケースからギターを取り出す。
――スキル波動を使用しますか?
――YES/NO
勿論NOだ。
――了解しました。
ワイバーンと戦った時のような禍々しいオーラは出なかった。
「これですか、確かに見たことない形状ですね。ただ恐怖感とかはありませんね」
「……でも、とても強い魔力を感じます。……ロペさんが魔装と言ったのは納得です」
メルさんは食い入るようにギターを見ている。
やっぱり魔力とかってあるんだな。
「でもソル隊長! この魔装は攻撃するだけじゃないっすよ! ね、カミシロ先輩!」
ラルがソルさんにギターを指さしながらギターの本来の良さを伝える。
ここにいるとギターがなんだかわからなくなるけど本来は音楽の道具で他人を攻撃するためのもじゃないからなぁ。
「へぇ、そうなんですか? カミシロさん」
「えぇ、本来は攻撃とかする道具ではなく音を奏でるものですし」
ソルさんは首をかしげながら話を聞いている。
ギター、というか音楽を知らない人に音楽を言葉で伝えるのは難しいな。
まぁそもそも音楽を言葉だけで伝えること自体難しいけど。
「せっかくですし聞いてみます?」
「特に危険とかはないですか?」
「大丈夫っすよ! 自分とかなんにもなってないっすし」
ラルが胸を張って自信満々に言う。
「でしたら……せっかくですし」
「わかりました」
俺はアンプとエフェクターを取り出した。
そしてシールドでエフェクターとギターをつなげる。
そしてエフェクターからアンプにシールドを繋げてアンプの電源を入れる。
――スキル音量増加を使用しますか?
――YES/NO
NOだ。
――了解しました。
いちいち出るのがめんどくさいなぁ。
俺はそう思いながらアンプのボリュームなどを調整していく。
そしてエフェクターのオーバードライブとディレイとブーストの電源を入れる。
――ディレイを使用しますか?
――YES/NO
――オーバードライブを使用しますか?
――YES/NO
――ブーストを使用しますか?
――YES/NO
一気に来てくれると楽なんだけどさ。
毎回こうなるとめんどくさいけど何かの間違いで使用するよりはマシかな。
勿論NOで。
――了解しました。
万が一でも町の中で使ったらマランさんに怒られる……てか殺されるんじゃないかなぁ。
最初にあった時は殺されかけてるしなぁ。
やっぱりめんどくさいけどちゃんと確認しよ。
「さて、またバラード系になるかな」
「……よくその魔力をコントロールできますね」
メルさんは不思議そうに俺のことを見てくる。
「なんか俺にはギター専用のスキルがあるみたいなんですよね」
「……なるほど。……そういうことですか」
さて、何を弾こうかな。
「そうだなぁ。フィル、なにか聞きたい奴とかあるか?」
この前この酒場で弾いた時に楽譜がなくても弾ける曲はやりつくしちゃったしな。
「え! あーっとね。いつも練習しているやつ」
せっかくフィルに声をかけたのだがまだ目を合わせてくれない。
まぁ原因は俺にあるんだろうしな。
後で話せるようにしなきゃな。
俺は店の鍵が閉まってることを確認した。
開けっ放しだとすごい人が来るからな。
ありがたいことだけど。
「わかった。……なら曲はさよならで」
俺はこの世界に来て初めて弾いた曲……そして毎日フィルと練習している曲の弾き語りを始めた。
そして最後のコードを弾き終わった。
「なるほど。確かに攻撃するためではないという意味がわかりました」
「……そのギターって不思議ですね。……聞いたことのない音でした」
二人とも静かに頷くように余韻に浸っていた。
「やっぱりカミシロ先輩はすごいっすね」
「カミシロってやっぱりすごいな」
やっぱりギターってか音楽を伝えるのは実際に聞かせるのが一番だよなぁ。
「これでワイバーンを倒したのでしたら……どうやったのか気になりますね」
「てかカミシロ先輩一気に強くなったって聞いたっすけど! まだ自分を抜いてないっすよね?」
ラルが心配そうに聞いてくる。
まだレベル的には負けてるだろうしな。
「まだ負けてるよ。まだね」
「な、なんすかその言い方! 自分だって強くなってるっすよ!」
「カミシロさんはワイバーンを倒したんだろう。ならラルはやばいんじゃないか」
「な、ソル隊長まで! 今に見てるっすよ!」
こんな感じで俺と部隊の男たちとは仲良くなれた。
「さて、今日は帰りますか」
ソルさんは席から立ち上がった。
「そうっすね」
あ、そういえば俺ってどうしよう。
「カミシロ先輩、また明日迎えに来るっすね」
「わかった」
どうやら俺はここで生活する感じだな。
「……じゃあフィルちゃん、また明日」
「うん! じゃあねメルさん!」
部隊の人達は店から出て行った。
「さて、とりあえず店のかたずけをするか」
店の中は部隊の人たちが使った皿やグラスなどが置いてあった。
「そ、そうだね」
そう言って俺達は店のかたずけを始める。
「「…………」」
き、気まずいな。
次回!
戦闘訓練再開!




