服はある程度持っておきたいよね……
買い物スタート!
「さて……行こうか」
「うん……」
俺とフィルはキラキラと輝いたオーラが見える小綺麗な雑貨などが売っている……武器屋街とは逆の方に進んで行った。
別にこういう所に行ったこと無いわじゃないけど。
なんだか変な緊張感があるな。
「カミシロ……実は私、こっちの雑貨街の方に一回も来たことないんだ。……ただ服を買うだけだったら武器屋街にもあるよ」
なんだかフィルは本当に行きたくないのか……もしくは緊張しているのか。
「まぁせっかくだしさ」
「そうだね。でも貴族とかいたら怖いな」
なんだ、この世界にも貴族とか階級があるのか。
でもよく考えたら魔王って王様だし……そういうのがあってもおかしくないのかな。
「きっと大丈夫だよ」
俺もそろそろ布をちょっと加工した服も嫌だしな。
まぁロペさんに借りてるから文句とか言えないけどね。
それにフィルっていつもオレンジのワンピースだし、何着持ってるんだろうな。
この世界の基準は分からないけどバリエーション増やした方がいいと思うしな。
「ならカミシロ、行こっか」
「ああ、よろしくな」
俺とフィルは雑貨街に足を踏み入れた。
雑貨街を歩いてみると……武器屋街に比べてきらびやかだし、歩いている人もあっちに比べてガラが悪い訳でもない。
むしろフィルが言っていた通り貴族みたいに襟が立っている長いコートを着ていたりちょっと小洒落ている感じがする。
「やっぱり……想像通りだったな」
フィルはまだ普通とはいえ……俺は完全に浮いていた。
まぁロペさんの家の部屋着を着てきている訳だし。仕方が無いな。
「適当な店でも入ってみるか」
この世界のトレンドなどは全くわからないからな。今回は適当に外着でも買えればいいか。
「カミシロはこういう店に行きなれてるの?」
「うーん……別に良く行く訳じゃないからな」
確かに東京とか都会と言われる場所にはある程度行ってはいるが……俺は服とかにこだわりは無かったしな。
別に慣れてるわけではないなぁ。
「それでも堂々としてるしね。……凄いな」
「そうかなぁ……この店にするか」
俺はフィルと話しながら適当な服屋を見つけた。
さすがに襟が立っている貴族のような格好が行くような店には行かない。
多分お金的にもキツイだろうしな。
それにまずは安いお店で何着か買いたいしな。
「分かった。それじゃあ入ろう」
フィルはいつもみたいに元気な声ではなく、あまり目立たないようにコソコソとしているの感じだった。
「やっぱり緊張してる?」
「うん……あんまり来ないからね」
いつもなら俺の先を歩くのに今は俺の後ろをピッタリと離れないようについてきている。
なんだろう、歳相応のような……
この子がワイバーンを倒したりなんて想像も出来ないなぁ。
「そんなに緊張しなくても多分大丈夫だよ」
俺はフィルにそう言って店の中に入っていった。
”カランカラン”
ドアを開けると小さな鐘の音が聞こえた。
ロペさんの酒場にもあったし以外と人気なのかもしれない。来店したのがわかるって機能的だし。
「はーい」
中は古着屋みたいに色々な服がワゴンの中に入っていた。
ただどれも洋服に近いのだが何かが違うような……そんな違和感があった。
「こんにちわ。あの、服を買いたいんですが」
「まぁそうですよねー。お客さんの好みとかあります?」
軽い返事をする女の定員さんはワゴンの中に入っている服を適当にあさっている。
「特にないですけど、あんまり派手なのはちょっと」
この世界のトレンドなんて知らないしあんまり悪目立ちする格好でいたくないしな。
一応ジェラルさんに貸してもらっている服があるけどいつかは返さないといけないしな。
それに今は洗濯中だし一着だけはつらい。
「うーん……これなんてどうですかー?」
定員さんは白に近い灰色のシャツを引っ張り出す。
なんだろ、Tシャツなんだけどな。多分素材が前世と違うから妙な違和感があるのかな。
俺は定員さんからTシャツを受け取って体に当てたりしてサイズ感を図る。
本当は試着とかしたいけど試着室みたいなのもなさそうだしな。
「多分サイズの方は大丈夫ですよー。後は下ですねー」
定員さんは別のワゴンをあさり始めた。
「あの、これって値段は?」
「えーと、五百ゴールドでいいですよ」
俺は小銭入れのような小さい麻袋の中身を確認した。
すると中には銀貨が五枚入っていた。
五百ゴールドってことは鉄貨五枚だから……余裕で足りるな。
「なんだお客さーん意外と持ってるねー。今日は何着か買いに来たって口ですかー?」
定員さんは俺の所持金を確認するとまたワゴンの中をあさり始めた。
「ええ、何着か買いに来たんですよ」
「なら少し安くしときますよー」
そう言って定員さんは適当に違う服の上下を持ってきた。
「ここら辺とか似合いそうですけどねー」
うん、前世とあんまり変わらないな。
「そうですね、これでいくらぐらいです?」
「うーん、上下で六着だからほんとは三千ゴールドだけどなー。二千でいいよー」
おー、意外と安いな。
「だからそこのお嬢ちゃんに一着買ってあげなよー」
定員さんはフィルのことを指さした。
確かに余裕があるしな。
「カミシロ、自分のは自分で出すよ?」
「いや、いいよ。せっかく付き合ってもらってるんだし」
「うん。その心意気は大事だよー。私はねーこれが似合うと思うんだけどなー」
定員さんはあらかじめ用意していたように真っ白のワンピースを持ってくる。
「お嬢ちゃんって今もワンピース着てるけど白も似合うと思うのー。それにこれとか」
「ええ、こんなにいっぱい」
「お客さん次第だけどどうするー?」
定員さんはいたずらっぽい笑みを浮かべた。
「……手持ちは少ないですよ?」
「男だねー。大丈夫、ちゃんと三千で納めるから。お嬢ちゃんおいで」
「あーと……カミシロ、ありがと!」
フィルは一瞬戸惑っていたが最後はお礼を言って奥の部屋へと入っていった。
「ああ、お客さんもそこで着替えていいよー」
……俺だけ扱い雑のような。まぁ外から見られる感じでもないし。
俺は定員さんが持ってきてくれた服を適当に着た。
……遅いな。
まぁ遅いものなんだろうけどなぁ。
「お客さーん、お待たせ―」
奥から定員さんが出てくる。
「どう? カミシロ? 変じゃないかな?」
その後に続いてフィルも出てくる。
いつものオレンジのワンピースではなく真っ白なワンピースだった。
それに小物として麦わら帽子を被っていた。
「うん。ちゃんと似合ってるよ」
「ほんと? よかったよ」
いつもと違う感じだな。色だけで変わるものなんだなぁ。
「お客さーん、後何着かここに入ってるからー。それと着なかった服、貸してー」
「わかりました」
俺は定員さんに着なかった服を渡す。
「はーい。これが今回の買った商品ねー」
すると……パンパンになった麻袋が出てきた。
「…………」
「大丈夫よーこれでちゃんと三千ゴールドだからー」
「なんか、ありがとうございます」
俺は銀貨三枚を定員さんに渡した。
「気にしないで―。その代わり、また来てねー」
定員さんは笑って手を振った。
「じゃあフィル、行こうか」
「うん! またねリぺさん!」
リぺさん? どっかで聞いたことあるような。
「じゃあねーフィルちゃん」
俺はちょっとした疑問が残ったまま店を後にした。
次回予告!
まだまだ買い物は続く!