怪我と報酬
やっと帰ってきたよ!
「ただいまー!」
先ほどの森の中からロペさんの地下室へと帰ってきた。
「疲れたなぁ」
「お疲れ様でした。カミシロ様、先に水浴びしていいですよ」
「あ、ありがとうございます」
俺は木でできたクローゼットからタオルと変えの服を取り出す。
まだ外は明るかったので寝間着のバスローブを着るには早いと思ったから別の服にした。
そして俺は水浴び場に入った。
「やっぱり、マシにはなったけど……まだ痛いな」
俺は血が付いた服を脱いだ。
アンガー・ウルフに噛みつかれた右の脇腹をみる。
幸い肉が抉れるとか悲惨なことにはなっていないけど。
フィルのお陰で血は出ていないが傷跡が残っている。
それに体の内側が痛いな。
「異世界舐めてたなぁ」
俺は独り言を呟きながらなぜか適温のシャワーを浴びる。
あー、やっぱりしみるなぁ。
こんな怪我前世では……トラックに轢かれてるからなんとも言えないか。
俺は傷口に適温のシャワーがかからないように浴びた。
……そういえば右肩にはなんの異常もないんだよな。
てっきり黒い穴ができてるかと思ったけど。
まぁ変化がなくてよかったなぁ。
「先に入らせてもらいました」
俺は水浴び部屋から出た。
「次はフィル様、先に入っていいですよ」
「わかったー」
フィルはクローゼットの中からタオルと着替えを持って水浴び部屋に入っていった。
「……カミシロ様。傷の方はどうですか?」
「ああ、心配されるほど酷くないですよ」
「そうですか。本当は助けに行くべきだったのですが」
ロペさんは非常に申し訳なさそうな顔をしている。
まぁ助けてほしかったけども、きっとこの異世界で生きていくには経験しなきゃいけなさそうだしな。
「まぁ助けに来てほしかったですけど……ロペさん風に言うのなら”何事も経験”ですよね」
するとロペさんは少し驚いたような顔になり、そしてすぐに微笑んだ。
「ええ、きっといい経験ですよ」
まぁ、いい経験なのかは分からないけど。
「そういえばロペさん、この後って何か予定とかありますか?」
せっかくだから服とか買いに行きたいな。
まぁ金がないんだけどね。
「いえ特には。ただ私は店の開店準備がありますが」
そういえばロペさんって酒場のマスターだったな。
「だったら手伝いますよ」
「いえ、お気になさらず。……そういえば渡すものが」
ロペさんはキッチンの方へ行き、小さな小銭入れみたいな麻袋を渡してきた。
「この前のワイバーンの素材の金額です。フィル様と半分ずつになってしまいますが」
タイミングよく、俺にお金が手に入った。
「えっと、家賃っていくらですかね」
とはいえな。すぐに私利私欲に使うのはよくないしな。
「家賃のことでしたら心配しないでください」
「いえ、それは……」
「カミシロ様は私のスキル、嘘つきを引き継ぐのですから。弟子のようなものです。なので気にしないでください」
ロペさんはニッコリとした顔で言う。
「せっかくですのでフィル様と買い物でも行って来たらどうですか? フィル様は女の子なのに服とか興味がなくて、カミシロ様と一緒なら行くかもしれませんし」
ロペさんって本当にいい人だなぁ。
それにちょうど服が欲しいって思ってたしね。
「なら……遠慮なくもらいます」
「ちなみに。モンスターを倒したとき、私に言ってくれれば鑑定屋に持っていきますので」
鑑定屋、たしかラル達がアンガー・ウルフを渡したところだよな。
「ロペさーん、出たよー」
「フィル様。カミシロ様が服を買いたいみたいなので一緒に行ってきてくれませんか」
俺が服を買いたいなんて一言も言ってないのにな。
まぁ好都合なんだけどね。
「でも、私あっちの方詳しくないよ」
「それでも、カミシロ様だけだといく色々と困ってしまいますし」
確かに土地勘のないを俺が一人で行ったら迷子になりそうだしな。
それにフィルかロペさんにこの世界のファッションについて聞きたかったしな。
「フィル、せっかくだし一緒に行かないか?」
「カミシロは傷の方は平気なの?」
「ああ、フィルのお陰かなんともないぞ」
まぁ多少痛いけどね。我慢できるレベルだけど。
「そっか。なら……私も行こうかな」
「ではフィル様。これはワイバーンを倒した時のお金です」
「わぁありがとう!」
フィルは小銭入れみたいな麻袋を手に持って中を確認している。
「じゃあフィル、行こうか」
「うん! ロペさん行ってきます!」
「はい。お気をつけて」
俺とフィルはワイバーンを倒した時に手に入ったお金を持ってロペさんの家を出た。
次回予告!
ただの買い物ですよ!