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今日から学校と仕事、始まります。①莞

別に

作者: 孤独

神は言った。


『それ、いるの?』

「別に」


別にあるけれど、欲しいかというと”別に”と言う。

便利、面白、そんなとこである。

しかし、神であるあんたにもあるんだろう。

人に授けるのだから。



「俺、変な力を手に入れた」


神と契約し、得た能力。”着替”。

特別に凄いわけではないのだが、社会的に便利だし、面白いから神に望んでみた事で得られた。


”着替”

右手は対象者に触れるか、対象者の写真を持つ事が必要である。

左手は着替えたい衣類に触れるか、衣類の写真を持つ事が必要である。

能力を発動させると、対象者は左手の衣類の情報に沿って、一瞬で着替えてしまうのである。


男性の自宅にはクローゼットはなく、代わりにアルバムがいくつもある。朝起きたら、面倒な着替えや悩む服選びもこの能力でパパッと着替える。

パンツも、シャツも、スーツも、ネクタイも、靴だって、自由自在に着替えられる。


「今日はこれか」


社会的に見れば、万引きなんだろうが。服の写真を撮るだけで、様々な衣類を身に付けられるのだ。まったく怪しまれる事もなく、苦もなく、様々な衣類の情報は手に入る。情報だけが必要であり、整理はとても簡単かつコンパクト。

洗濯やクリーニングだって


「!もうこの服汚れてきたか。別の服にするか」


継続して同じく服を選ぶと、服に付着している情報まで継続されてしまう。

これは服のストックを増やす事で洗濯をする必要性を消した。

また、この能力で着ている服は、脱いでしまうと消えてしまうので、どっちにしろ服のストックは増やしていかないとマズイのだ。


洗濯代と手間隙が、新着探しと写真撮影に変わった。こっちの方が安いし、楽しいものだ。

自分が生活する上で便利な力は良い。



◇      ◇


ガタゴトガタゴト


『次は○×駅。○×駅ー』

「………………」


この能力。

自分にしか使った事がない。神が言うには、他人に対しても有効であるが。正直、興味はない。

便利な物は共有するべきという意見もあるが、こいつは社会のルールを変えている能力だ。初めてユニクロで使った時は罪悪感も出た。世界にバレたら、俺は人を着替えさせるという仕事でもやらされるのだろうか?

俺は普通のサラリーマンで良い。その生活が少し楽で、穏やかに暮らす事で良い。


そもそもこの能力。能力というには恥ずかしいものだ。

自分としては、面倒を取っ払ったくらいのこと。


「そこどけよ、おっさん」

「……ああ、すまない」


ふとした事。

関わりたくない。

明らかに変な奴がいる。

何を考えているのか、そこらへんの誰かを落としたい気持ちからか。

しかし、言い合うことや怒るとは恥ずかしい事だ。


口論は苦手だし、俺は穏やかで静かにいたい。

通り過ぎてすぐのこと。穏やかを乱す、関わりたくない悲鳴が上がり始める。


「ちょっとあなた、どうして裸なんですか!?」

「なんだこの変態!?」

「はああぁぁっ!?なんじゃこりゃーーー!?」

「警察呼ぶわ!!」

「こっち来るな!近寄るな!」


”着替”で関わりたくない奴を着替えさせる。

もう二度と関わりたくないし、そいつとは関わりたくないと伝える格好に相応しいだろう。


能力はやっぱり、扱い方が大事なんだろうな。

天下をとろうとするわけじゃなく、穏やかかつ便利に過ごすには本当に些細な事で十分である。

バチすら当たらない。


「お、ヨーグルトのセールがあるのか」


ただ邪念が時折、出てくる。

この能力で、衣類に関しては完全な万引きが可能としている。どんなに高価であろうと、どんなに貴重であろうとだ。写真やネットの情報からでも着替える事ができる。

だが、食べ物や用具などにはできない。


「…………ふっ」


他とは違う。

それは自分が掲げる穏やかな生活に反した事だ。それになんの意味がある?

美味いから一日中ビールを飲み続けるのと同じことが、意味を持つだろうか?激しい運動後の、スポーツ飲料が、体に染み渡る快感が楽しみであるように。

幸福と穏やかは、ほんの一時にあればいい。逆も同じだ。

お金は浮いているのだ。

美味いビールを盗めて何になるという?

そんな刺激は必要ない。もっとも、タダが魅力なのは肯定できる。その上で約束事。


「ビールは一日、1本までだ」


生活に変なことは要らない。

野球中継を観ながら夕飯と行こう。

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