第63話.モヤッとする≪三原≫【1】
部屋にうっかりストーカー女を入れてしまい、勘違いが今まで以上に加速したらどうしようかと思ったが、いつもならマンションの外で待ち構えているストーカーが今朝は居なかった。
姿が見えないだけでどこかに潜んでる可能性も!ーー杞憂だった。
非常に穏やかな気分で当校。
オカズ(変な意味じゃない方)消失→エマージェンシー→ガクブルということもなく、和やかに会話も弾む。
「機嫌良さそう。」
「不愉快なアレをまだ見てないからね。」
久しぶりに終始良い感じに時間を過ごせた。平穏、最高。
安寧のため、是非このままフェードアウトしてほしい。
帰り道でイライラすることもなく無事帰宅。ーー順調過ぎて、ふと嫌な考えが過る。
一度部屋に侵入に成功したことにより、セキュリティの弱点を見つけ、解除方法を突き止めたかもしれない!
まずい!既に部屋に潜んでる可能性も!!ーー焦りながら各部屋を見たけど特に形跡はなかった。
ピリピリしていた自分に思わず苦笑ーーして完全に気を抜いていた。
ドカッー
「ぬぁあッー!?」
背後からの突然の衝撃により、壁に顔面を強打する羽目に。
手で顔を押さえ痛みと怒りを堪えつつ、振り向いて暴挙に出た犯人を睨む。
「…っんの、つもりだコノヤロー!」
振り向いた先には、これっぽっちも悪いと思ってない顔の白檀が。しかも何を考えてるのか、俺の横に手をついた。ーー所謂壁ドンである。余りの気色悪さに鳥肌が立った。
「うぅわッ、ダッサ!超ダッサ!あれくらい避けろや。ドン臭ッ!」
心底バカにした顔にものッッッすごくイラッとした。
「さっさと離れろ!気色悪い!ーー顔見せんな、お前の顔を見ると不愉快にしかならないんだよ。」
「奇遇だな、俺もてめぇの顔見ると不愉快にしかなんねぇわ。」
と言いつつ俺の顎を持つ。ーー所謂顎クイである。顎を繰り返し痛め付けるの略ではない、正式な方の顎クイである。どうやらコイツの頭がおかしくなったようだ。バグかバグなのか?今すぐ帰って直してもらってこい。
素早く白檀の手首を掴んで捻りあげ、壁に体を押し付けた。
「俺の顔見るのが不愉快なら、仕事をさっさと済ませて帰っとけよ。こんな時間まで居るとか何なの?いつもなら居ないのに、今日に限って何で居るの?不愉快とか言いながら、俺の顔見るためにグズグズ居座ってたの?キモいからそういうのやめてもらっていいですかね?それともサボり?ご主人様が折角お前に与えてくれた仕事なのにサボり?いや、それはないな。ご主人様の与えたお仕事をサボるとか、流石にないな。ーーああ、そっかぁ、白檀君は単に仕事の出来ないノロマってヤツかぁ。ごめんねー、お前のノロマさに思い至らなくて。」
「ノロマじゃッ、ねぇ!」
繰り出された頭突きを避け、白檀から距離を取る。