【3】
意気揚々と飛び出したまでは良かったのに………
「痛いっ!痛いってば!離して!」
支配者のマンション前で即両親に捕まった。
何で支配者のマンションが分かったの!?
「お前というヤツは!」
「離して!」
両親と揉み合っていると、いつの間にやって来たのか支配者の姿が。
「支配者!助けて!」
「こんなところで騒がしくしていると人目につきますから、中へ入りましょうか。」
彼は私を見ること無く両親に言った。ーー折角来たのにちょっと酷くない!?カッとして怒鳴りそうになったけど、良く考えたら両親に二人の仲を反対されてるわけだし、あんまり馴れ馴れしいところを見せるべきじゃないって気がついた。
支配者は多分私の両親の態度で、私たちの仲を良く思われてないって察したから親しげな態度は反感を更に買うって思ったのね。
「それで、どうなんですか?ーーまぁこの様子だと、聞くまでもない結果だったんでしょうね。」
「そう、…ですね。お察しの通りです。」
「ではこちらの書類にサインを。」
びっしりと文字の書かれた書面を読むこともせず、パパは言われた通りサインした。
「ねぇパパ、何の書類?」
彼がサインを確認し頷くと、私に声をかけるでもなく、両親はさっさと出ていった。
「ええと、パパ達って帰ったの?」
「帰ったよ。」
「私だけ残されたってことは、もう私たちの邪魔しないってこと?」
「そうだね。」
「じゃあ私、転校しなくていいのね!ずっと支配者と一緒に居られるのね!」
「お前の脳ミソってどうなってんの?」
「へ?」
「ああ、ミソじゃなくてクソが詰まってんのか。なら思考回路がイカれてるのも頷けるよ。クソじゃしょうがない、クソじゃ。つか、息止めてもらえる?お前の吐き出す息で徐々に部屋が汚染されてくから。ーー息しなきゃ死ぬ?じゃあ死ねばいいよ。今すぐ死んでよ。死にたくない?我が儘言わないでほしいな。我が儘は女子の特権だし、女子の我が儘は叶えてあげたい派だけど、お前に我が儘言われると何様ですかって気持ちが溢れてくるのは何故だろう?ーーやっぱ即刻死んでほしい。切実に。」
「な、何言っ…」
「うんうんそうだね、そうだった。お前には人間の言語理解不能だったね。理解出来てたらこんな結末になるわけなかった。」
支配者の言ってることが半分も入ってこない。言ってることが理解出来ないーー理解したくない。
これは誰…?こんな人知らない。私の知ってる支配者は、決してこんなこと言わない。
「あんた誰よ!」
「なんの冗談?面白くもなんともないんだけど。お前は誰かも分からない相手をストーカーするんだ?」
「は?あんたこそ何言ってんの?私はストーカーなんてしない!ーー今の発言で確信したわ。あんたは支配者じゃないって。」
「…お前って本当に人の神経逆撫ですんの得意だね。ストーカーなんてしないときたか。このクソストーカーが。マジで死ねばいいのに。ーーこれ以上話すのも時間の無駄でしかないね。」
言い終わったところでドアから男が現れた。
「ちょっ、何!?痛いっ!離して!」
男は強い力で私を連れ出すと、別の部屋に移動し乱暴にベッドに投げつけた。
「きゃあっ!!」