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第55話.ありふれた日常が行方不明な件≪三原≫




「ああ~ん、もう!今日もすっごい美味しい!こんな美味しいお弁当食べれて幸せ!私のためにいつもありがとう!大好き!」


古里羅ーーすばる言うところのゴリラが言った。


物凄くイラッとした。だがここで反応しようものなら、さらに苛立ちが募る結果にしかならないのはもう充分過ぎるくらい解っているから反応しない。



水族館に行ったあの日以降、誘われてもないのに箸持参で昼飯に参加し、断りもなく勝手に俺の弁当を食べる。断りもなく勝手に俺の弁当を食べる。大事なことなので二回言っておく。


多分、いや確実に頭おかしいんだと思う。キツめの美人系で、黙ってればモテるんだろうなとは思うし、中身が超キッツい、いや、超痛い系?でなければ有りか無しかで言えばーー無いな。完全に無いわ。痛くない性格を想像しようとして失敗した結果、やはり無しになった。



古里羅ーーいいやもうゴリラで。時折感じてた視線は気のせいでも自意識過剰でもなくコイツだった。



あの日絡んできたのを切っ掛けに、その後はちょいちょい絡んでくるようになり、冷たくしようが罵倒しようが完全に無視しようがお構い無しだ。挙げ句待ち伏せに尾行、家まで追いかけてくるわで完全にストーカーと化している。


俺のマンションはセキュリティレベルがかなり高いから、今のところ部屋までは侵入されてないのが救いといえば救いだけど。



「茄子ってそんなに好きでもないけど、これ美味しいね。」


知ってる。だからスライスチーズと薄切り茄子を豚ロースでカツにしたら、美味しく食べてくれるかなと思って作ってみた。



「そっか、それは良かった。これも美味しいから食べてみて。」



輪切りにしたパプリカのカップの中に入った、パセリを散りばめた卵焼きを渡す。



「…三原君、覚えてる?」

「ん?」


「甘くて美味しいから、騙されたと思って食べてみなって三原君が言うから食べたら、結果騙されたあの出来事を。」


「いや、騙してないよ?パプリカは甘くて美味しいよ。」



そう言えばそんなこともあったね。パプリカなら甘いし食べられると思って言ったんだけど、全然ダメだった。


パプリカカップという可愛らしい見た目にしてみたけど、どうやらお気に召さなかったようで卵だけ食べている。ーーあ、ちょっと表情変わった。不味かったか?多分不味かったんだろうな。




ため息が出そうになる。最近イライラしたり考え事しながら作ってるせいで、塩を入れ忘れる等の普段なら絶対やらない凡ミスしてる自覚がある。



茹でたキャベツに千切りした梅干しを巻いたのを食べたら酸っぱい。ーーハチミツ梅じゃなく、間違えて酸味の強い梅干しを使ってしまってる。




バンッー


「ねぇ、いつまで誘い続ける気なの!?私に嫉妬させるためだって分かるけど、いい加減にしてよ!もういいでしょ!」



いつものことだが、コイツが何を言ってるのかまるで解らない。ーー同じ言語を使ってるはずなのに、何故こうも意思の疎通が出来ないのか非常に謎だ。


同じ言語のように聴こえているだけで、人とゴリラの言語の間には、大地と宇宙ほどの開きがあるのかもしれない。ーーって、何言ってんだろ俺。そもそも人間とゴリラが同じ言語なわけなかった。どうやら混乱しているようだ。



いい加減ウンザリだし邪魔以外の何でもない。


さて、どうするか?



ふと気付いたときには、まだすばるに取り分けて渡してなかった長芋と青じその肉巻きが、いつの間にか一個だけになっていて、それもたった今消えた…



悪寒が!!!



俺の皿にあった肉巻きを速攻すばるの皿へ。



た、多分これで大丈夫なはず。



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