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第52話.思えばあれが俺のモテ期ーーじゃない絶対に≪三原≫


待ち合わせ場所の、ベンチに座って相手を待つ。



「「お待たせ」」



顔をあげると、白い襟元にリボンの着いた、膝上丈のギンガムチェックワンピース姿のすばる。ーー足元はレース付靴下にベルト付のヒールの太いパンプスだ。



うん、可愛い。


今日は誰かにコーディネートしてもらったようだ。



「俺も今来た「この娘も一緒なの?」



すばるしか見てなくて気付くの遅れたが、目の前に立つ見知らぬ人物が会話に割り込んできた。



「ええと…、誰ですか?」

「やだっ、冗談言わないでよ!」



分からないから聞いたのに、拗ねた顔で肩パンされた。めっちゃ痛い…



「ちょっと!大袈裟なリアクション止めなさいよ!ほらっ、シャンとしな!ーーごめんね~、コイツひ弱なんだよね。」


お前は誰目線なんだ。


知らない女に絡まれるとか厄日?今日俺厄日なの?


友達面で何を言われようと、知らないものは知らないって言うしかない。




「もう!いい加減しつこい!ーー怒ってたのは知ってたけど、だからって知らないとかグダグダ言い続けるって酷くない!?そもそも私のせいじゃないの!私だって出来ることなら同じ中学行きたかったよ!でも子どもの我儘で片付けられて無理だっの!でも高校は同じだし、あの頃みたいに毎日側に居てあげるから安心して!」


「安心らしいよ。」

「安心の要素がまるでない件。」


誰かと間違えてるんだろうけど、人の話を自分の都合の良いように脳内変換してそうなヤツだな。ーーあれ?なんかこんな感じのこと前にもあった気が…





あれはそう、俺に初カノが出来た小6の頃だった。



クラスが違う彼女と廊下で偶々会えた時、嬉しくて手を振れば『何デレデレしてんだ』と殴られ、彼女と仲良く話していれば『デレデレすんな』と殴られ、デートの日は待ち合わせにまで乱入し、人の恋路を邪魔する女子がーーって、コイツあの時の女子か!?



小6の時しか一緒じゃなかったから、顔とか全然覚えてないけど、話の通じなさがそいつとソックリだ。



…なんかいろいろ思い出してきた。



あの頃はクラス替えの度にからかわれ、俺定義の“お話し合い”で“穏便”に解決したのだった。ーーが、何をトチ狂ったのか知らないが、告白っぽいことを言い出す野郎が沸くようになった。全く嬉しくないモテ期到来。ーー忌まわしい封印されし記憶の封印が今解かれた。


コイツのせいで思い出さなくていいものまで思い出す羽目に。



「ねぇどこ行く?あ、もう出かけるとこ決めてある?まだなら私が決めたい!てか、この娘どうすんの?当たり前のように私達と行動してるんだけど。帰れって言いなさいよ。まさか言えないとか?もうっ、まったくヘタレなんだから!ちょっと聞いてる?ねぇ!ちょっと支配者!」


「あ゛?」


「どうしたの?支配者。」



俺の名前は支配者じゃねーよ。友達面すんなら正しい呼び方しろやカスが。ーーやっぱ無理。カスに名前呼びされるとか。




苛立っていると袖口をソッと握られた。



「三原君。」



あ、圧が!物凄い圧が!



「…な、何でしょうか。」

「ここ、人目があるから、ね?」



解ったから圧をかけるのやめてくださいお願いします。



「あ、あれは!」

「え?」



適当に指差した後、猛ダッシュした。



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