第43話.中の人など居ない。いえ居ます≪灘流≫
これから夕飯て時に、姉ちゃんがお出かけなさっちゃいました。
何よりも夕飯を楽しみにしていた姉ちゃんが、食べずに。
多分不可抗力なのだろう。
夕飯食べずに出かけたし。
あの姉ちゃんが、夕飯時に夕飯食べずに出かけるとかあり得ない。
中の人がどこのどちら様だか知らないが、身体は姉ちゃんなので丁寧に扱わないと。
姉ちゃんじゃないから、姉ちゃんの部屋に運ぶのは不味いよな。
目が覚めて暴れ出さないとも限らない。万が一暴れて姉ちゃんの物を壊されでもしたら、多分俺が怒られる。
それは全力で避けたい。
それに、得体の知れない人物を、姉ちゃんのベッドに寝かすのもなんか嫌だ。…身体は姉ちゃんだけど。
客室のベッドにしよう。
まぁそのうち目覚めるだろうし、待ってよう。
なんて思ってたら、いつの間にかウトウトしてしまってた。
ん?ーーどうやら謎の人物もお目覚めしたようだ。
出てきたら挨拶でもしますか。ーーなんて思ったのに大分時間経っても一向に出てこない件。
まさか、二度寝?二度寝なの?目覚めて見たことない天井なのに、二度寝?
知らない天井だって台詞、言わなくていいの?今度いつ言えるか分かんないよ。二度と言えないかもよ?ーーだというのに二度寝とは、なんと豪気な。
あ、やっと出てきた。
登場までに尺取りすぎだろ。これがドラマだったら、さっさと行動起こせよ!って視聴者に怒られるレベルだろ。
因みに俺は若干イラッとしたよ!
おい!声かけようよ!第一村人的な俺に声かけようよ!
暫く待っても声かけてこないから、起きて部屋の明かりをつけた。
なんかものすごく時間を無駄にした感が否めない。
そして姉ちゃんの中の人が、何故か俺の顔をめっちゃ見てくる件。
ま、まさかヨダレが!?
然り気無くヨダレを確認ーー良かった。垂れてない。ヨダレじゃないとするとーーもしや鼻毛の方だったか!?
「どうしました?」
内心の動揺を隠し声をかける。
鼻毛が…とか注意されたら、出てますがそれが何か?って当たり前みたいな顔で答えよう。そうしよう。
「あ。」
なんだか顔色悪くなってね?
「うぎゃああああああーーーーーー!!」
「うわっ、あっぶなっ」
何してくれてんだよ中の人。危うく姉ちゃんの身体を痛めるとこだっただろ!
そんなに眠いなら態々起き出さずに寝てたらいいのに。何したいのかねこの人。
大事な姉ちゃんに傷を付けられそうになり、イラッとした気分で身体をベッドに運んだ。