第42話.何この状況!?≪??≫【1】
意識がゆっくりと覚醒し始め、寝返りを打つ。
心地良い肌触りの柔らかな枕が、あたしの顔をそっと受け止めてくれる。
身体を包む布団はどこまでも軽く、動きを阻害することもない。
もしも雲に寝そべることが出来たなら、こんな感じなのかもしれないと思わせるベッドで微睡みながら、また夢の中へ戻りたくなった。
ああ、もう起きなくちゃ。二度寝は最高だけど、流石にそろそろ起きないと。
でも、この高級感溢れるベッドの魔力に負けてしまいそう・・・
・・・ん?
ベッド???
え?あれ?あたし、何で寝てるの?ーーあたしデートしてたよね??…うわ、もしかして、デートが夢だった?
え~…デート、夢なの~?彼との念願のデートが夢とか、あげて落とすのやめて欲しい。あ~、そっかあ、夢かぁ…。…一瞬、何故かホッとした自分がいた。
なんだろ?今の感じ。
まぁ、いっか。もうちょっとだけ寝ちゃおっかな。
・・・・・
・・・
・・
いやいや待って待ってあたし!やっぱりおかしくない!?良く考えたら、就寝した記憶が見当たらない。
なのにベッドで寝てるってどういうことなの?
そもそもあたし、ベッドじゃなくて布団で寝起きしてるのに何故ベッド?
意味が解らない。
今や眠気はぶっ飛び、意識は完全に覚醒してるけど、目を開けるのが怖い。
どこかの危ない奴に拉致監禁されたとかだったらどうしよう!?
ね、寝た振りしたまま犯人が現れるの待った方いいの!?
今すぐ脱出考えるべき!?
どどどうしよう!?
どうしたらいい!?
心臓が早鐘のようになり、息苦しい。
物音がしてないか耳をすましてみたけど何も聞こえない。
どれだけの間、そうして張りつめていただろう。10分かもしれないし、1時間かもしれない。
あたしは意を決し目を開けた。
先ず目に入ったのは、ベッド脇の照明器具と小さな時計。
照明が灯ってることと時刻から、今は深夜くらいかもしれない。
おそるおそる身体を起こし観察する。
枕、布団、そしてベッドは明らかに高級な部類に入る品だ。
照明と反対側のベッド脇には、コの字型のサイドテーブルがあり、上にアロマグッズが置かれている。
そういえば良い香りしてたっけ。全然リラックス出来てないけど。
ちょっとだけ笑いそうになった。
ベッドの後ろの壁には抽象画が飾られ、正面と左右はカーテンで仕切られるようになっていて様子が分からない。
そうやっていろいろ確認したこともあって、早鐘のようだった心臓は少しずつ落ち着いてきたけれど、まだドキドキしてる。