第38話.おむすびとおにぎりの違いとは何か考えたとか考えないとか
食堂側のオープンテラスへ行くと、三原君が席を確保していた。
「どこフラフラしてたんですかね。」
「乙女にそういうの聞いたら駄目。」
「…腹壊してるの?」
「メロンパンを求めてさ迷ってた。」
「別に聞いても良い用事だった件。で、買ってきたの?」
「悲しいことに売り切れだった。」
話ながら手際よく、三原君が取り皿に、おかずとおむすびを取っていく。
「コンビニ?」
「ううん、メロンパンで評判のパン屋のやつ。」
「へぇ~。評判のとことか美味そうだね。残念だったな買えなくて。」
「見知らぬ人がメロンパンくれたよ。」
「は?なんで?―ほら。」
「ありがとう。おそらく私のメロンパンへの隠しきれぬ愛に、感動してくれたのだと思う。」
「そんなにメロンパン好きだった?」
「普段はそれほどでもないけど、今日はどうしても食べたかった。」
「「いただきます」」
肉巻きから食べよう。
あ、中にスライスチーズとシソが巻いてあって美味しい。
枝豆おむすびは、刻みしば漬けと枝豆の見た目が可愛らしいうえに美味しい。
「美味い?」
「うん、美味しい。」
「なら良かった。」
こっちの肉巻きは、豆苗を巻いてて食感が良いね。
スクランブルエッグには、オクラと鮭フレーク入れて、味付けはめんつゆだろうか。こっちの卵焼きは――粉チーズ入ってるんだね。
「三原君の作る料理はいつだって美味しいから、幸せな気分になれるよ。」
「そう言ってもらえると、作った甲斐がある。」
カブの葉と鰹節のおむすびは――うん、しゃきしゃきしてる。
こうやって具をご飯に混ぜるおむすびって好き。
あ、キノコと野菜のバター炒めにピーマンが入ってる。さりげなく入れてるつもりかもしれないが、緑色した憎いあんちくしょうの存在感がすごいです。
ピーマンは三原君のお皿へ。
「ピーマンも食べなきゃ駄目だ。」
オカンか。
「三原君、自然界では苦味は毒という認識だから、生き物達は食べないんだよ。」
「自然界では毒だが、人間の世界には、良薬は口に苦しという言葉がある。」
熱いピーマン攻防の結果――私の勝ち。
清々しい気分でミネラルウォーターを飲む。
「肉巻きちょうだい。チーズの方。」
って言ったのに、豆苗の方を寄越すという地味な嫌がらせを受けた。
美味しいから別にいいけど。
肉巻きと、まだ食べてないおかずと、おむすびを取ってもらう。
おむすびは定番の鮭とタラコだ。
肉巻きを食べ、鶏肉の照り焼きを食べ、そして肉巻きへ。
お肉美味しいよお肉。
魚よりお肉が好きだ。
だって魚って骨がめんどくさいし。
魚は骨を取ってもらわないと食べない派です。
「肉ばっかじゃなく野菜も食べなきゃ駄目だ。」
オカンか。
うるさいので、野菜を食べる気持ちで照り焼きを食べる。
「野菜を進めてるのに、なんで照り焼き食べるんですかね。」
「野菜を食べる気持ちで、照り焼きを食べてるんだよ。だから、これは野菜なんです。」
「いや意味解んないです。」
バター炒め(ピーマンオンリー)を差し出される。
見なかったことにしてミネラルウォーターを飲んだ。