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【2】



双子に作ってもらうのは良いとして、今は無い物ねだりしても仕方無い。


今回はコンビニの―――神はどうやら私を見捨てなかった。やはり普段の行いが良いと、良いことがあるね。


お目当てのメロンパンが食べられなかった私に、せめてもの情けと、神が機会を与えたもうたのですね。



風に導かれるように大通りを行き、現れた公園。



迷いなく園内へ進む。



蜜に魅せられた蝶のように、ただ真っ直ぐにそれのみを欲し舞い降りる。



そう、それは紛れもない、心から沸き上がる願いの象徴。



甘い匂いを吸い込む。





「ちょっ、あああの、なんですかいきなり!?」



偶然見つけたアゴ乗せ台が揺れ、アゴが乗せづらくなりかけたので、押さえつつパンの匂いを嗅ぐ。


「ちょっ、クッ…びくともしないってどういうことー!?」


「お気になさらず。」


「気にしますからね!?急に見ず知らずの相手が肩にアゴ乗せてきたら!!ちょっ、肩!肩痛い!押さえつける力強ッ」



園内に居る親子連れや老人、早めの昼休憩の会社員等が、こちらへ注目する。



「暴れると匂い嗅ぎにくいんで止めて下さい。」


「嗅ぎ!?あああた、あたしの匂い嗅がれてるー!!」


「自意識過剰だね、お姉さん。食べ物以外で匂いを嗅ぐのは、美少年と決めてます。それが私のぽりすー。」


「ぽりすーて…。なんかサラッと変態宣言してきた!?いやーっあたし変態と密着してるーっ」



会話の内容は、おそらく途切れ途切れくらいにしか聞こえていないと思うが、ジタバタするお姉さんを、若干不審げな顔で見てる人々。



まぁ、そんな顔になるよね。そっと寄り添うだけのいたいけな少女と、何かされてる訳じゃないのに、滑稽な動きの大人を見たら。



「そんなことより、今はパンの匂いを嗅ぐことが大事。」


「結構重要なことなのに流された!?」


「嗅ぎにくい。」



ギリギリギリ―



「痛い痛い!ちょっ肩!何この理不尽!分かった、分かったから!パンあげるから、それを嗅いで!」



誰かの『若手芸人?』という声が聞こえた。




手とアゴを離すと、お姉さんが振り返った。



「…え、小学生?」



そんな若くない。



ガサゴソ―



「はい、どうぞ。」

「ありがとう。」



お姉さんが、私の一番好きな生クリーム入りメロンパンをくれた。



見ず知らずの私にメロンパンをくれるとは、なんて優しい人だ。


ドラマなら通行人Aでしかない名も無き通りすがりの私を、わざわざ呼び止めてメロンパンをくれるなんて、優し過ぎる。神か。



「呼び止めてないからね!?」



どうやら声に出していたようだ。



優しいお姉さんに、メロンパンのお返しをあげよう。


ポケットから出した物を渡す。




私が渡した黒い髪に赤い目の小さい人形を、お姉さんがまじまじと見る。


「すごく可愛い人形ね。ありがとう。」



そう言ってバックのポケットから、人形がひょっこり顔を出すように入れた。



「困ったら人形を掲げ、『助けてエロい人』と言えば良いよ。あ、一回しか使えないからね。」



何言ってんだコイツって顔された。



今の発言のどこにそんな顔をされる要素があったと言うのか。



「え~と、…あ、ありがとう?」



まぁ、使おうが使うまいがどちらでも良いけど。


お姉さんは多分使う。




あ、もうこんな時間。



「じゃあね、お姉さん。」

「え、あ、…さよなら。」




お弁当食べに戻らないと。






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