表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/152

第31話.揺れる乙女心の向かう先は



北斗は細かいことを気にしすぎだと思う。好奇心は猫も殺すらしいよ。



ある日ポックリ死なないと良いね。




カットグラスに入った白いチーズをスプーンで口に運び味わう。豆腐のような柔らかい食感。


見た目から、レアチーズケーキのような甘い感じかと思ったら、味は程好い塩加減だった。甘い物を食べた後だから、塩味が良いね。



「旨い?」

「うん。」


「そか。良かった。…うん、旨いな。」


「ありがとう。買って来てくれて。良く覚えてたね、チーズのこと。」


「ぐ、偶然あっちに行く用があって、たまたま思い出しただけ。」


「現地で食べた?」

「いや。」

「時間なかった?」

「そういうわけじゃないけど。…初めてのことは一緒にやりたいっていうか…。」



付き合い始めの恋人か。




そうか、初めてを一緒にしたいのか。なら、これからも揺れる乙女心は北斗に解決してもらおう。



どの乙女よりも私を優先し、私の欲望を満たすが良い(何様)



買いに行くのが面倒くさい食べ物、何かあったかな。すぐに思いつかないが、多分何かあるだろう。



いや、待て私。北斗には彼女居たような。



北斗(食べ物)が欲しいのに



『俺の時間の全ては、すぃ~とはぁ~とに捧げてるんだ。めんご!』と、小首を傾げ、顔の前で合わせた手を顔の傾きと同じ角度にし、瞬きをパシパシ高速で繰り出されながら、アヒル口で断られたらどうしよう。



北斗(食べ物)が私の物にならないなんて、想像しただけで胸が痛む。



しかも、台詞の痛さに加え、小首を傾げ、顔の前で合わせた手を顔の傾きと同じ角度にし、瞬きをパシパシ高速で繰り出されながら、アヒル口とか。




悲しみに震え、顔面を鷲掴むことだろう。そして握力の限界に挑戦することだろう。



何か手を打つべきだろうか。



「北斗って彼女居たよね?」

「居ないよ。」


「あれ?居なかった?」

「…最近別れた。」


「ショックで引きこもってた?」


「いや、バイトが忙しくてサボッてただけ。そんなにショックでもなかったし。」


チラリと私を見て視線を外す。



「ふ~ん。」



何ですか、その態度は。私のせいじゃないよ、駄目になったのは。まだ何もしてないし。



「じゃあ、『俺の時間の全ては、すぃ~とはぁ~とに捧げてるんだ。めんご!』と、小首を傾げ、顔の前で合わせた手を顔の傾きと同じ角度にし、瞬きをパシパシ高速で繰り出されながら、アヒル口で断られることはないんだね。」


「ちょっ、何そのキャラ。」


北斗(食べ物)はどうやら私の物のようだ。



このチーズ、パンに塗っても美味しいかな?


焼きたてのパンが食べたくなってきた。そう言えば最近、焼きたてメロンパンのお店に行ってないな。その内行こう。



「俺があげたヤツ飲まないの?」

「飲むよ。」



何かを期待するように、じっと見つめられた。





その後も、会話の合間合間に、奢りドリンクを意味あり気にチラチラ見ながら飲まないのか何度も聞かれ、グーで殴るかペットボトルで殴るか熟考した結果、殴るのは止めた。チーズに血がーー違った、チーズを買って来てくれたことに免じーー違うな、大切な友人なので止めた。うん、これだ。






秘密基地その1から出た頃には下校時刻になっていた。ペットボトルに口を付け一口。




去り行く北斗の背を眺める。




感覚が告げている。



急げ、と。



今ならまだ…




一番近くの転移ドアに飛び込み、我が家の一室に移動後急いでそこから出る。





ああ、良かった。間に合ったーー傾ぎながら、そんなことを思って目を閉じた。





  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ