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第28話.パーティーに憧れていた時期が私にもありました【1】




私の中に生まれた緊張感を、玄関マットの声が切り裂く。



「波多野君、大丈夫!?はは鼻血出てるよ!?」


「あ、ああ、大丈夫だ。」

「これ使って!」


渡されたハンカチで鼻血を拭きつつ私を睨んでくる。


ガラスのハートなので、そんな風に睨み付けられるとガクブルしてしまうから止めてほしい。きっと私は今、蒼褪めていることだろう。



「エロの途中で鼻血とか、妄想が先走っちゃったんですねわかります。」


「鼻血はお前のせいだろが!」



居るよね、こういう何でも他人のせいにするヤツ。



うまくいかないことを親のせいにしてみたり、教師や学校のせいにしてみたり。その内社会が悪いとか言い出すんだよ。



「溜まってるものを吐き出せないことを私のせいにされても…。」


「いやいや全てはお前のせいだろが!良い感じのとこに乱入した挙げ句の膝蹴りで鼻血だろ!」


「か弱い乙女が膝蹴りなんてする訳がない。常識的に考えて。」


「いやいや確実に膝蹴りされたから。された本人がされたって申告してるからな!」


「そんなことより、学校の敷地内でエロ行為に及ぶとは。どこで誰が盗…、うっかり目撃してしまうかもしれない場所でするなんて、品行方正な私には理解出来ないね。」


「流した!?…ハンッ、馬鹿かお前。ちゃんと死角になってるとか人が来ないとか考えてるに決まってんだろ。」



もぐもぐ



若干人を小馬鹿にした顔で言ってるが、甘いな。このドーナツ並に。私に死角などない。寧ろそういう場所に重点的に設置してますが。何とは言わないけど。




「いい加減食うのやめて俺に詫びろ!」



おそらく空腹でイライラしてるのだろう。



空腹って気持ちを荒ませるよね。



きっとお昼休みにお弁当食べてないのだろう。食べるよりエロを優先したの?食欲よりも性欲派なんだね。それを悪いとは言わないけど、イライラするくらいならお弁当食べようよ。




次は生クリームのドーナツにしよう。



「…」



オヤツ取って来た時と相手違うけど、二股とか三股とかモゲれば良いのに。使用中に鮮やかにモゲれば良いのに。



「な、なんだよ。」



慈愛の瞳を向けたら、何故か怯んだように後退りした。



か弱い乙女に見つめられて怯むなんて、何が貴方をそんなにも追い詰めたと言うのか。恐らく女子に酷い目に合わされたことがあり、見つめられると怯んでしまうのだろう。そういうことなら、ちょっとだけ同情しても良いかもしれない。



「なんだその瞳は!」


「いえ別に。」



指摘して心の傷に触れてもいけないので、気配り上手な私は黙っておく。




「…波多野君、この人と知り合いなの?」


「……」



何故そんな苦虫を噛み潰したような顔をするんだ。



チラッと顔合わせたことあるだけの、知り合いでも何でもない間柄なのに、そんな顔をされる謂れはないですよ。







そう言えば、初めて顔合わせたのっていつだっけ?





あれはそう…、遠い昔、私がまだ赤ちゃんはコウノトリが運んで来ると信じてた頃だ。その頃の私は無邪気に怪盗ごっこにはまり、なんちゃらコーポレーションのパーティーがあると聞けば駆けつけ、なんちゃら財閥の息子の誕生パーティーがあると聞けば駆けつけ、招待もされてないパーティーに潜入し、お宝(料理)ゲットという厳しいミッションを自分に課していた。








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