第22話.胸の高鳴りは失望へと変わった【1】
「…あの、…姉ちゃん?」
博史の合体方面のテクを、魔法具の画面越しじゃなく、是非生でじっくり舐めるように見学させてほしい。
決して疚しい気持ちではない。清純派でお馴染みの私に、疚しい気持ちなど欠片も存在するわけがない。
ただ、なんていうか、臨場感を感じたい年頃なんです。
好きなバンドをテレビで観ながら歌を聴くのもいいけど、やはり会場に足を運び、生で姿を見、生の歌を聴くのが最高だと思う。
そういった純粋な気持ちで見学を希望していることを解ってほしい。
そう言えば、胸が大きい女子を相手にしてることが多い気が
おっぱい星人なの?
「どうだった?」
「どどどどどうってなな何が?」
「おっぱいどうだった?」
灘流はおっぱい星人だろうか?おっぱい、おっぱい、ワッショイおっぱい、ソイヤッソイヤッおっぱい、と今日は独りおっぱい祭りを開催してたんだろうか?
おっぱい祭り開催だとしたら流れ的に…
「灘流の背後で、カチリと鍵のかかった音がした。二人きりの部屋は静寂に支配され、音はひどく大きく響く。『どうして鍵を…?』美羽が不安げに問うと、何かに急かされたかのように、灘流は無言で美羽を押し倒しましたとさ。」
「待って待って、いや、ほんと待って?なんで絵本の読み聞かせっぽいトーンで官能小説的な語りかけしてきたの?あとめでたしめでたしで締めそうだけど、全然めでたくないよ!?不穏な行く末しか見えないのですが!?」
「押し倒したことは否定しない、と。」
「冤罪だよ!?」
博史は父親の愛人が巨乳だったからおっぱい星人になったんだろうか?てか、もっとこう、合体シーンを詳しく臨場感溢れる感じに入れてほしかった。博史の過去とか心の闇とか心底どうでもいい。もっとエロをくださいエロを。
《月下香》なんていう思わせ振りなタイトルつけたヤツ誰だ。
月下香の花言葉は危険な快楽だというのに、ものすごくエロを期待した私の胸の高鳴りを返していただきたい。
博史のサクセスストーリーがメインで、一番肝心な合体シーンが、博史が合体の流れに持っていこうとする場面で、なんか良い感じに綺麗な表現で濁されているが、私が今求めているのはそういうのじゃない。
そういうのじゃない。
大事なことだから二回言いたい。
追い求めているのは、内容を思い出しながら、想像の翼を広げ、高みへと導いてくれるようなリアル感です。
「押し倒しはしなかったが二人きりになって揉ん「揉んでないからね!?」
「じゃあ揉ま「揉まれてもないからね!?」
揉んでも揉まれてもなかったようだ。どうやら祭りは開催されなかったらしい。
よく考えたら、いや、よく考えなくても、灘流はそんなエロキャラじゃなかった。
爽やか美少年に危うく汚名を着せるとこだったよ。
おっぱい星のプリンス博史のせいで、ちょっと思考が混同してたようだ。
博史の合体の凄さが伝わらない内容だったが、画面越しで見た感じは優秀そうだったし、何時の日か、高級ラブドールを販売する時に講師として招きたい。
という大義名分のもと、お招きしてガッツリ近くで見たいです。
…ん?今気付いたけどなんで正座?
「…」
どうした灘流よ、黙り込んで。
顔を上げた灘流は、なんだか泣きそうな顔だった。
ほんとどうした灘流さん。
美羽ちゃんになんかされた?
否定したけど、実は美羽ちゃんに無理やり…、いや、あり得ないな。灘流の方が強いのに、無理やりヤられちゃうとかないな。
罵られた?
罵られ、うっすら頬を染めながら、美羽ちゃんを見つめる灘流…
それを私に知られたかもしれないと思い泣きそうなんだね。
あの部屋でおこったことは見てないから安心するが良い。それに、万が一見てたとしても、別に咎めないよ。
例え灘流がド変態の道を歩んでいこうとも、生暖かい眼差しで見守ります。
そんな気持ちを込め灘流を抱きしめた。