第21話.ご褒美欲しい≪灘流≫
姉ちゃんの部屋を訪れると、姉ちゃんはソファで本を読んでいた。
取り敢えず床に正座で様子を伺う。
「……」
「…あの、…姉ちゃん?」
沈黙が痛いです。
お、怒ってる?心情は別として、おっぱいヒャッホーッで、デレデレしてたように見えた俺を怒ってる?
姉ちゃんはこっち見てくれないまま
「どうだった?」
「どどどどどうってなな何が?」
え、何?何の?おっぱい?おっぱいの感想?俺は今、おっぱいについて述べればいいの?
いや違う、違うぞ俺。落ち着け俺!おっぱいについて尋ねてるわけないだろ!
「おっぱいどうだった?」
尋ねられてたー!?おっぱいについて尋ねられてたよー!?
「灘流の背後で、カチリと鍵のかかった音がした。二人きりの部屋は静寂に支配され、音はひどく大きく響く。『どうして鍵を…?』美羽が不安げに問うと、何かに急かされたかのように、灘流は無言で美羽を押し倒しましたとさ。」
「待って待って、いや、ほんと待って?なんで絵本の読み聞かせっぽいトーンで官能小説的な語りかけしてきたの?あとめでたしめでたしで締めそうだけど、全然めでたくないよ!?不穏な行く末しか見えないのですが!?」
「押し倒したことは否定しない、と。」
「冤罪だよ!?」
「押し倒しはしなかったが二人きりになって揉ん「揉んでないからね!?」
「じゃあ揉ま「揉まれてもないからね!?」
何言い出すの!?二人きりになったからっておっぱい揉まないよ!?
相手初対面だよ!初対面なのに、二人きりになったらおっぱい揉むって、人としてどうなの!?ケダモノ感がすごいですけど…
初対面じゃなくても、二人きりになったからって揉んだりしないってことを強調したい。
俺、そんな理性無いヤツだと思われてんの?女子なら誰でもいいからしたいと?
姉ちゃんの中の俺って、そんなにガツガツした奴なの?
「…」
うわ~、…姉ちゃんの中の俺のイメージがそんなんだったら泣ける。
顔を上げると姉ちゃんと目が合う。
やっと俺を見てくれた。
姉ちゃんは俺の側に来ると、慈しむような瞳で見つめ、俺を抱きしめた。
「…ぁあっ、…ぅあっ、姉ちゃっ…も、う、勘弁っ…」
「灘流に拒絶される日が来るなんて…。」
「拒絶っ…じゃなっ…クッ」
「灘流ならもっとイケるはず。」
さんざん俺に触って満足した後再度尋ねられた。
「どうだった?」
「アレは強烈だね。でも、効かない相手には役立たずじゃないかな。“魅了”無しで男堕とすの無理っぽいよ、アイツ。」
「そっか。」
「ブレスレット、何時も着用しててくれるか分かんないけどいいの?初対面の俺より、生徒会の誰かから渡した方が着用し続けてくれたんじゃ。」
「別に誰が渡そうが、一度着けちゃえば問題ないよ。」
「あれ?ずっと着用しててほしいんだよね?」
「うん。だから一度着ければ外れないよ。美羽ちゃんが卒業するまでは。」
「そっか。駒にすんの?アレ。」
「どうしようかな。暫く様子見ってことで。」
姉ちゃんのチマッとした身体をギュッとする。
「俺、今日頑張ったと思わない?」
「頑張ったね。」
「ご褒美ちょうだい?」
「何がいい?」
「膝枕。」
横になり膝枕を堪能する俺の髪を、姉ちゃんが優しく鋤いてくれる。
姉ちゃんが触れるところから、姉ちゃんと密着してるところから、魔力が流れてくる。
まるで俺の穢れを祓うように、護るように、そっと俺を包み込む。
無意識なんだろうなぁ。
姉ちゃんの魔力は不思議だ。いつだって柔らかくて優しくて、暖かい。
姉ちゃんの魔力が俺の内を満たしていく。
「重くない?大丈夫?」
「大丈夫。灘流の髪はいつもサラサラで気持ち良いね。」
「手入れ頑張ってるからね。」
「マジですか。」
「ウソだけど。」
「だと思った。」
嫌なこともあったけど、ご褒美もらえたし、良い1日だったな。