【2】
心にダメージを受けたまま、嫌だけど手を引いて歩く。
やっと客室に到着。
「外して良いですよ。」
「君の部屋?」
「違います。」
「ここで藍蒔を待てばいいの?」
「…藍蒔は来ないです。」
なんでアイツ、呼び出しといて居ないんだよ。
姉ちゃんに言われて呼び出したんだろうけど、ちゃんと最後まで責任持てよクソドM。
急用ってデート(リサーチ)か?
そうなら許してやるけど、違ったらボコろう。
腹ペコだろうと思い、話しかけてみたが聞いちゃいねぇ。
ニヤニヤしてるから、なんかろくでもない妄想でもしてるんだろうな。
備え付けの魔法具で飯を頼む。
なんていうか、すごく自意識過剰っぽいよな。美少女な私を好きにならないはずがないって思ってそう。
人間、大事なのは中身だと俺は思う。皮一枚剥がせば皆一緒なのに、外見で好きになるなんてくだらない。
顔以外、良いとこあるのかね?この人。
それ以外モテ要素なさげに思える。
“アレ”がなきゃ、モテないんじゃね?
「美羽さん、美羽さん?俺の話聞いてました?」
聞いてないのは分かってたが一応確認。
「…ほぇ?」
うん、やっぱ聞いてなかった。
「立ったまま寝てました?」
「や、やあね!そんなわけないでしょ!」
「聞いてなかったみたいだし、もう一度言います。腹減ってますよね?すぐ用意するんで食べてください。」
「失礼します。」
開きっ放しだったドアから使用人が入って来て、料理をテーブルに置く。
腹の虫が鳴き、チラリと俺を窺う視線に気付いたが無視。
本を読み、頃合いを見て声を掛けた。
「まだ時間大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。」
「じゃあ、美羽さんの時間、俺に少しだけください。」
仕方なくソファーに並んで座り、疑われない流れを作るためちょっと雑談しますか。
「藍蒔じゃなく俺が相手ですみません。なんか急用が入っちゃったみたいで。」
取り敢えず申し訳ないって態度をとる。
「美羽のこと呼んでおいて別の用で居ないとか、藍蒔君たら勝手なんだから、もう!」
「ほんとすみません。俺なんかで。」
「あっ、違うの!別に藍蒔君じゃなくて嫌だとかはないからね!だから、自分のこと卑下しちゃダメ!君はとーっても素敵な人だって美羽は思うの。」
「…ありがとうございます(棒)」
然り気無さを装って、脚の付け根付近に手を置くのは如何なものか。
コイツほんとキモいな。
男なら皆、女子に触られると喜ぶって思ってんの?
だとしたら大間違いだよ。
俺は好きじゃない女になんて触られたくない。
「藍蒔君が留守のお蔭でって言うのも変だけどぉ、こうして美羽達お話出来たから、藍蒔君に感謝しなきゃね。」
「あ~…、はい。」
それから暫く、セクハラを繰り返しつつ、俺の全てを知り尽くそうとグイグイ来られ、苦痛な時間を味わった。
もう限界…
「美羽さん。…これ、今日の記念に。」
そう言って花をあしらったブレスレットを見せる。
「受け取ってくれますか?」
「え、くれるの?」
「美羽さんの為に(姉ちゃんが)作ったんです。」
「ありがとう。」
さっそく着けてくれたから、安堵のため思わず笑顔が。
俺の全てに粘り着くような、凄く気持ち悪い女の魔力が消えた。
これでもう、こいつと居る必要はなくなった。一秒でも早くお別れしたいので、菓子折りを渡してさっさとお帰りいただきました。