第19話.草食動物ってこんな気持ちなのかも≪灘流≫【1】
「そんなわけでお願いします。灘流さん。」
どんなわけですか?と思わなくもないが、何時ものことだから気にしない。
我が家の…、我が家の?ていうか姉ちゃん作の姉ちゃん迷路と呼ぶのが正しいかな。そこへ転移。
この迷路、ちょっと危ない。
普通の迷路だと思って挑むと、大変なことになるんだよね。
例えば、壁を壊して直進しようとすると、普通の蔦の振りしてた蔦が、巻き付いて身体を千切る。
蔦問題をクリアして壁ぶっ壊せたとしても、足下に落とし穴が出来て、串刺しになったり、酸の中に強制入浴させられたり。
俺が知ってるのはそれくらいだけど、まだまだ有るんじゃないかな。
姉ちゃんて、念には念を入れるの好きだし。
備えあれば憂いなしを実践してる。
つか出入口って何ヵ所かあるのに、何故敢えて出口ないここを指定したんだろ。
目の前の人を観察する。
姉ちゃんよ、心駄々漏れになる迷路て…
迷路の枠組みから逸脱してないかな!?
迷路の干渉力遮断してなかったら、俺の心が駄々漏れちゃってたよ!?
こういうことは先に言っておいてほしいんですけど!!
俺の知られたらヤバい部分が、危うく暴露されちゃうとこだった。
この人みたいに。
妄想ですごく盛り上がってるっぽくて、声掛けずらいのですが…。
俺だったらこんな状態で、知らない奴に話しかけられたらめっちゃ嫌だ。
誰も居ないと思って大声でアニソン歌ってたら、すぐ側に知らない人が居て聴かれてたくらい居た堪れないわ~。
でも、いつまでもこうしてるわけにもいかない。
「え~と、美羽、さん?で良かったかな、名前。」
突然の声に一瞬ビクッとしてこっち見た相手は、小動物っぽい雰囲気の美少女だった。
…見た目だけは。
駄々漏れてくる心もそうだけど、俺を見る目がね、もうね、肉食獣が獲物を見るが如くギラギラしててドン引きだよ!
この場所、媚薬的な物が散布されてるの?
つか、この人の中の俺のキャラ…
下心満載で突っ込んで来たから避けてみたら、めっちゃ文句言われた。
「俺の手を握ってください。」
「は?急に意味分かんない。」
お気付きじゃないと思いますが、いろいろ駄々漏れてますよー。
本人曰く、お得意らしいウルっとした上目遣いで見てくるが、全く心が動かされない件。
さっと手を掴んで転移した。
迷路から出て、道順覚えられないようにアイマスクを渡す。
まぁ、覚えるなんて無理だろうけど念のため。
防犯上の問題で、転移が使えるとこと使えないとこがあるから、ここからは徒歩か移動用乗り物で移動する。
徒歩だと時間かかるし、ずっと手を引くのも嫌だってことで乗り物を選択したわけだけど…
まるで捕らえた獲物を離さんとするかのように、俺をガッツリ捕らえてる。
あれー?おかしいなー。
美少女のおっぱいを背中で堪能してるのに全然楽しくない。
「だって見えないから、すごく怖いの。」
寧ろ俺の方が怖いから!
肉食獣に食らい付かれた草食動物の気分だよ!
さりげなさを装って、身体さわさわしてくるのをやめて欲しい。お触りサービスは実施してないから!
なんなの?痴女?痴女なの?発情期なの?
まさぐらないと死んじゃう病なの?
…ほんと迷路に媚薬的なヤツ散布されてないよな?
好きでもなんでもないヤツに触られるのって、すごい気持ち悪い…。
移動中、姉ちゃんと目が合ったら、『美少女のおっぱい堪能ですね分かります』という目をしていた。
違うんだ姉ちゃん、違うんだ!美少女密着ヒャッホーッおっぱいグヘへのノリじゃないんだ!
楽しんでないから!全然楽しんでないから!
嫌な感じにドキドキして、なんか変な汗が止まりません…