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第3話.世界は私のためにあるの≪美羽≫【1】




「―――」

「――」


…話し声…?


「――」


私に話しかけてるの?


誰…?


聞いたことない声。


相手を確かめたいのに、なんだかすごく眠くて…目を開けられな…い……










「知らない天井だ。」


(言ってみたい転生セリフ集より抜粋)を言い続け早十数年。


ノロノロと起き、出かける準備をする。


鏡に映る姿を入念にチェック。


「うん、今日もすごく可愛い。」



転生して初めて鏡を見た時は、自分の姿に度肝抜かれたけど、流石にもう慣れた。


顔は申し分ないけど、髪がピンクってどうよ…。


そんな不満も解消された。

だってだって、


なんと私、ゲームのヒロインに転生してたんです!


キャーッ、言っちゃった!

あ、勿論誰にも言ってないよ。電波だと思われるでしょ?



入学式の時、生徒会長を見て思った。


あれ?この人知ってるって。


そしたら他にも知ってる人が居て確信したよ。


ああ、ここって《plantae》恋の緑化大作戦~君で光合成~っていう乙女ゲームの世界なんだと。


総てが一緒ってわけじゃないけど、まぁ、そんなもんでしょ?ゲーム転生って。


ラノベの主人公も、ゲームと違う、こんなの知らない!みたいに戸惑ったりしてたしね。



「美羽ちゃん、朝ご飯出来たわよー。」


階下からお母さんの声。


階段を降りれば、朝食の良い香り。


グウ~~ッ


お腹は減っている。減っているが


「今日はいらない。いつもより早く行かなきゃダメなの。」


「もうっ、そういうのは早く言いなさいっ。おにぎりでも作る?」


「ううん、いい。じゃあ行ってきまーす。」



早く行かなきゃってのは嘘。朝食抜いて少しでも倒れる確率をあげるためよ!


そりゃ、わざと倒れることも出来るよ。だって私、演技派ヒロインだもん、うふふ。


今日は倒れてお姫様抱っこイベの日だから、朝食抜いて、顔色もちょっと悪い感じにして、いっぱい心配させるんだから。


あ~楽しみっ!










今日のイベ相手、萩原君の目の前でフラッとすれば


「美羽ッ」


焦った声で抱き上げてくれた。


キャーっ、お姫様抱っこ!そのまま保健室へ。




都合の良いことに保健室には誰も居なくて、萩原君と二人きり。


キャッホゥッ!


内心の乱舞はおくびにも出さず、寝た振り。


ベッドに横たわる私の髪に触れ、頬に触れる萩原君。


それはまるで宝物に触れるよう。


「少し顔色悪い、かな…。」


私の唇をなぞる指



「…美羽。朝飯はちゃんと食べないと駄目だよ。」


え、朝食抜いたのバレてる!?


「…美羽。」



ギシリとベッドが軋み、萩原君が私を見下ろしてるのが分かる。


キス?ねえキス?してもいいのよ、うふふ。したいでしょ?


ほらほら、遠慮せず可愛い私にキスしちゃいなさいよ。


徐々に萩原君の顔が近づき息のかかる距離に…


あ~、萩原君の唇はどんな感触だろう。


わくわくしながら待ってたのに、顔が離れていく。


えーっ、しないの!?ここまできたらしなさいよっ!しないとかバカじゃないの!?このヘタレがッ!


「…ゆっくり休んで。」


ヘタレは私の頬に触れ、保健室を後にした。



チッ。萩原君の唇はお預けか…。










いつの間にか眠ってしまい、気付いたら放課後だった。


授業サボっちゃったけど、まぁいっか。


教室に行くと萩原君がぽつんと一人きりで待って居て、赤紫の瞳が探るようにじっと見つめてくる。


「体調は?」

「もう大丈夫。萩原君、保健室まで運んでくれてありがとう。えと、重かったでしょ?ごめんね。」


「…重くない。…朝飯は抜いたら駄目だ。」


「うっ、ごめんなさい。気を付けるね。萩原君にも迷惑かけちゃ悪いもんね。」


「迷惑なんかじゃ…。」

「ほんとに?…美羽、ドジだし、萩原君に迷惑ばかりかけてるから、嫌われちゃうかなって…」


ヒロイン力を発揮させ、萩原君を見つめる。


「…美羽。」


萩原君の瞳の奥で何かが揺らめいた気がした。







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