第16話.何か忘れてるような気がする【1】
アフタヌーンティーも佳境に入り、上段のメープルロールケーキに手をつける。
小さいサイズの可愛いロールケーキだ。
メープルうまうま。ーーそういえばメープル原産のところで、雪の季節に雪の上にメープル垂らしてタフィー作ってたな。アレ美味しそうだった。
タフィー食べたくなってきたが、無いので次はベリーとホワイトチョコで我慢。
小さめのグラスに入ってる、ホワイトチョコムースの上に飾られたベリーが可愛い。ーーなどと取り敢えず女子が言いそうなことでも言ってみよう。可愛いより美味しいが正義です。
ムースの甘さにベリーの甘酸っぱさが、良い感じのアクセントになってるね。
「ベリーのやつ美味しい?」
「うん。灘流のは?」
「美味しいよ。コーヒー生地のとこは甘さ控え目で、ムースの甘さと合わさると丁度良い感じ。」
美味しい物を食べると、人は笑顔になるね。
灘流さんめっちゃ笑顔。
双子に損ねられた機嫌直ってらっしゃる。
無駄吠えが五月蝿い犬共と、灘流のぷちコントも飽きたので、双子にはご退場いただいた。
「…」
さっきから匂ってる顔のラベンダーが、なんかイラッとしてきたな。
おかしい、ラベンダーのリラックス効果が全く得られてない。
もっとほのかに香る感じならリラックス出来たんだろうか?
予定ではうっすら香るくらいだったのだが、舐められ過ぎた結果、プンプン匂うことになった気がする。
「《散れ》」
顔面を執拗に舐め回される事を前提に、香りをラベンダー以外にするべきだろうか。
食べ物系の匂いはどうだろう?
ラーメン、お好み焼き、ヤキソバ、カレー、ピザ、焼肉、ステーキ…
「…」
すごい空腹の時に嗅いだら、苛立ち度が上がりそう。
食べたいのに匂いだけとか、罰ゲーム以外のなんでもない。
ちなみに私は空腹に耐えられない派なので、空腹になったら破壊神に変貌するのであった(他称)
「姉ちゃんどうかした?」
この辺りなら平気かな。
「焼きたてのパンとコーヒーの匂いはどう?」
「??良い匂いだし好きだよ。」
そうか、好きなのか。じゃあ、それにしよう。
好きな匂いに変えたら、灘流は双子に舐められた時、喜ぶに違いない。
非常に素敵なものが撮れそうですね(ゲス顔)
ちょっとワクワクした気分で紅茶を飲んでいたら、何か忘れてるような気がした。
忘れるようなことだし多分重要なことじゃないだろうが、念のため自分の行動を思い返してみよう。
先週くらいから。