表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/152

【3】





お昼はカレーうどんを食べた。


カレーで制服を汚さないという難しいミッションをやり過ごし、灘流が駆けつける最悪の事態は免れた。



免れたのに…。






なんでこんなことに…。



どこで選択肢を誤ったのだろう。



ぶち当たって来た相手の足をへし折るべきだったのだろうか。


それとも三秒ルールを適用して、チョコを食べれば良かったのだろうか。



森に行くべきじゃなかった?


森でロリコン野郎を見つけなきゃ駄目だった?



歌の選曲ミス?



分からない。



考えても考えても私には分からない。





絶望に飲み込まれそうな私を見かねたかのように、去来する誰かの言葉。




そうさ今こそアドベンチャー



数ある将来の夢の中に、冒険者も選択肢に入れなさいという神の御告げかもしれない。



わかりました。



冒険者を目指します。



冒険者なんてファンタジーな生き物は、この世界に生息してませんが、なんとなく目指してみます。



目指してる風のていで、うっすら目指します。




御告げ問題はクリアされたから、最初の問題に戻ろう。



果たして私は、無事答えにたどり着けるだろうか…




ともすれば不安の波に飲み込まれそうになり、絶望に震えながら、どれ程の時を過ごしただろう。



ふと、小さな小さな光が見えた。






もしかして…





「…カレー…うどん…?」



そうだ、カレーうどんだ。


カレーうどんに違いない。


何故こんな簡単なことに気付かなかったのだろう。



全ての事柄はカレーうどんを指しているというのに。



カレーうどんさえ選択しなければ、こんな結果にならなかった。



謎は全て解けたよじっちゃん。




「カレーうどんは関係ないよね。」


「三原君、私の思考の海に勝手に入ってこないでください。なんでカレーうどん関係ないって分かるの?」


「え、なんでって聞いちゃうんだ。」


「分からないことは聞くよ。」


「いやいや、分かるよね。どう考えても、この前グースカ寝てた結果の0点だよね。何の落ち度もないのに悪者にされたカレーうどんに謝るべきだと思う。」


「三原君、確かに何の根拠もなく、カレーうどんを疑ったのは良くなかったと思う。でもね、カレーうどんだけが被害者じゃないんだよ。強いて言うなら皆被害者だよ。今回私は試験という悪しき風習が、果たして本当に必要なのか一石を投じる為、敢えて無謀な試みをしてみたわけ。与えられたことだけを、流されるようにこなすことに疑問も抱かない人々に、考えて行動することの重要性を知ってほしかった。自分で何も考えず、目の前に提示されたことをやり、誰かの敷いたレールを行けば人生は楽だと思う。けど、私達は常に考えなければいけないよ。考えることを止めたら駄目。考えて考えて、自分の最善をみつけなきゃいけない。そうして見つけた最善も、最善と呼べるものじゃないかもしれない。それでも、それはそれで良いと思う。私は抗い、もがき苦しみながら、社会や大人達に挑み、私らしく生きていきたい。出来れば皆にも、自分らしく生きてほしいって思う。…なんて偉そうなこと言っても結局、今回の一石はなんの爪痕も残せず終わってしまった。残せないだけなら良かったけど、私は敗れた。完膚なきまでに。…無力な自分が悔しいよ。まあ、だからといって諦めたりはしないけどね。自分らしさを失わないために。」



「0点だったけどまた寝るし、皆も寝ればいいのにってことですねわかります。」




「…三原君。」

「ん?」



私の声が、ちょっとだけ震えていたことに気付いた三原君が、真面目な顔で私を見つめる。




私は、制服で己の存在を誇示する憎き一点を指し示す。



ミッションクリアなら…ず…



灘流、ごめん…。私、汚れてしまった…



「…」

「…」



三原君は真剣な面持ちで私を見ると





「何この無駄シリアス。」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ