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第2話.美形になったけどなんか思ってたのと違う≪??≫





教室の窓から別の教室を眺める。


コの字型に建つ校舎の向かいの教室には男女のカップルらしき人影。



「何見てるの?」


「ん?俺ってカッコいいなってガラスに映る自分見てた。」


「あはっ。自分でカッコいいとか言っちゃう?」


「だって俺、カッコいいだろ?真里ちゃん。」



そう言って真里ちゃんの肩を抱き寄せると、真里ちゃんの頬がほんのり色づいた。


カップルらしき人影が誰かなんて分からないだろうけど、念のため真里ちゃんに人影が見えないように立つ。



「新しく出来た綿菓子のお店、すっごく可愛くて美味しいんだって。これから行ってみない?」


「今日はちょっと無理かな。せっかく誘ってくれたのにごめんね。…また今度誘ってよ。」


「ん、わかった。」



ちょっとしょんぼりな真里ちゃんの髪を優しく鋤く。


「そんな顔しないでよ。綿菓子屋さんは真里ちゃんと一番最初に行くよ。」


そう言うと真里ちゃんは元気になり、手を振って帰って行った。





ガラスを見る。


ミルクチョコ色の髪を後ろで結んだ、酷く不機嫌なイケメンが映っている。


さっきまで見ていた向かいの教室には、まだ二人が居る。


俺には二人が良く見え、何処の誰か分かる。こんな時視力の良さが恨めしい。



視線の先でピンクの髪の美少女と、赤紫の髪したイケメンがキスしてる。胸の奥にどす黒い感情が芽生えた。










桜の下で舞う花弁と戯れるような彼女を最初に見つけ、目が離せなくなった。


子どもみたいに笑う彼女の笑顔が見たくて笑わせた。



よく迷子になったり、何もないとこで転けそうになる彼女の事が放っておけなくて、側を離れ難くて…



この感情につける名は…




あ~…どうしよ。今めっちゃ何か蹴りたい。力の限り蹴りたい。


そうだ。蹴る物探しに行こう。そうしよう。








◇◇◇




蹴る物を探して廊下を歩いていたら石田に会った。



「蹴っていい?」

「お前が性転換してクール系美人になったら蹴られてもいいし踏まれたい。」



ちょっと引いた。




チリンッ


「ん?…今なんか聴こえ…」



石田が固まっている。


「石田?」



返事がない。ただの屍のようだ。



チリン

チリーン


鈴の音のようなそれがハッキリと聴こえた時、いつの間に現れたのか、青い髪の青い瞳をした美人が居た。



「あ…」


その人を見た瞬間すべてを思い出した。



「あああーッ!なんたる失態!うわ~最悪だ…」



チャラ系イケメンになって、イケメン高校生達と仲良くキャッキャグフフするという崇高な目標を達成出来なかった。



泣きたい。



これはアレだね。あのピンクの髪した逆ハービッチのせいだわ。


あいつ、魅了かなんか使ってると思う。



記憶とか封印した方が楽しそう!とかはしゃいでたあの頃の自分を殴りたい。


結果魅了にやられてなんも楽しめないまま終わるというね…。



ビッチのキス見て溢れ出たあの感情の名を今なら分かる。


あれは、そう、殺意だ!



この私を差し置いてイケメンとキスとか殺意しか沸かない。


私だってしたいよ!


イケメンと接吻したいよ!イケメンと接吻したいよ!


大事なことだから古くさい言い回しで二回言ったよ!



イケメンとキスしたいならなんでわざわざ男になったの?という質問は受け付けません。



べ、別にあわよくばBなL的展開になるかもとか思ってないんだからね!(ツンデレ風味)






身体をお借りしたお礼に状態異常解除をしてあげよう。これでもうピンクビッチちゃんの逆ハーからは卒業だよ。


やったね!



チャラ系イケメン君の身体から抜けた私は、自分の世界へ翔んだ。









「……と、おい桐人。」

「…んぁ?……」

「急にボケっとしてどうしたよ?」



怪訝そうな石田が居る。


あれ?…俺なにしてたんだっけ?



まぁいっか。



「あ?…あ~、ちょっと寝不足で今すごく眠いんだよ。」


「お前最近、美羽ちゃんに入れあげてたよな。さては美羽ちゃんのことを想って、夜も眠れないってやつか。」


「んなわけないっしょ。」



ニヤニヤする石田に、冷たい声音が出る。



「へ?だって美羽ちゃん好きだろお前。…フラれたか?」


「フラれてねーし。そもそもこの俺がフラれるとかあり得ない。…石田、世の中には数えきれないほどの女子が存在するんだよ。俺は、多くの子猫ちゃん達と愛し合うために生まれたんだ。そんな俺が1人の女子だけに掛り切りなんてダメだろ?」


「何キリッとした顔で最低なこと言ってんの?」


「そんな訳で、もうアイツには構わないよ。」


「ああ、そうですか…。」



今更ながら、ビッチに夢中だった自分に嫌悪感が…。

時間を巻き戻せるなら戻して、自分自身をぶん殴りたい。


お前の心はそんな女のものじゃないだろって。



もしも正気に戻れなかったら、俺はどうなってたのかな?


ちょっと想像してみたら、なんか恐ろしい未来しか見えなかった。










◇◇◇



「お久しぶりでーす」


モニターから視線を外して声の方を向くと、暫く見掛けなかった同僚がいた。



そうだ、イケメン高校生とキャッキャグフフしよう



どっかのキャッチコピーみたいな事を言って飛び出して行ったが実現させたんだろうか。


青い髪に青い瞳のクール系美人なのに中身が微妙だ。



「堀ちゃん。私が居なくて寂しかった?ねぇねぇ寂しかった?」



うぜぇ…



堀じゃなくてホーリーだから。


訂正も返事も面倒で無視してモニターを見る。




…あ、聖なる泉の側に聖剣差しとくの忘れてた。


勇者って今どの辺だったかな?



「ちょっと現地行ってきます。」


「えっ、ちょっ堀ちゃん!久しぶりなんだから話しようよ!」





現地に行く必要はないが、長々と愚痴に付き合わされるのは嫌なので、さっさとこの場から去った。






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