第13話.もし過去に戻ってやり直せるとしても、同じ選択肢を選ぶと思う【1】
なんでこんなことに…。
自分の心の望むまま、欲望に忠実にしたがったのが駄目だったの?
いつ死ぬか分からないから、後悔なんてしたくなくて、私はやりたいようにやって、楽しく生きてやるんだって思った。
だから、自分の心にだけは嘘をつかず、常に自分の心の声に耳を傾け、今、本当に自分の望むものがなんなのかを見つめてきたし、これからだってそうやって生きていく。
だけど…。
じわじわと絶望が心を侵食していく。
なんでこんなことに…。
私はそっと目を閉じた。
トイレから教室へと戻る道すがら、私の心は沈んでいた。
トイレットペーパーが知らぬ間に、シッホのようになって後ろから生えていたとか、制服のスカートが知らぬ間に、下着の中になって、下着が丸見えになってたとか、個室の鍵を閉めたつもりが忘れてて、思いっきり開けられたとかがあったわけではない。
ましてや、トイレットペーパーを巻き取っている時に、トイレットペーパーの中のヤツが、ちゃんと設置されてなくて、勢い余って外に転がり出て絶望したわけでもない。
お取り寄せ半年待ちの、超高級激うま一口チョコの最後の一個が、後ろからぶち当たってきたヤツのせいで床に落下でダメになったせいだ。
廊下は走ったらダメって言われてるのに走るとか、学校のルールすら守れないようじゃ、社会に出たらどうなることやら。
未来の社会人がこんなだと、先が思いやられるね。
こんな人ばかり増えたら、社会が崩壊してしまうかもしれない。嘆かわしいことだ。
やはりルールが守れない輩は、今からちゃんと注意して、ルールを守る真面目で真っ当な人間に導かないといけないよ。
若輩者の私だけど、明るい未来の為に、頑張って注意を促してみよう。
手始めにチョコさんをダメにした野郎に、廊下は走ったらダメだと教える為に、足をへし折ろう。…と思ったけど人目があった。
か弱い私が骨をへし折るとか無理だな。うん。
決して人目があるからじゃなく、か弱いという観念からへし折るのは諦めた。
私がか弱く、非力でさえなければ、目的を達成出来たのに。
神よ、何故私を、目的を達成させられぬ非力でか弱い人間にお造りになられたのですか。
力が、力が欲しい。
何者にも負けぬ強い力が。
誰にも行く手を遮られることのない強い力が欲しい。
シーーーン
あれ、おかしいな。
強い力を望むと、『力が欲しいか』とか言いながら、どっかの誰かが気を利かせて、めっちゃ強い力を授けてくれる筈なのに。
力が、力が欲しい。
シーーーーーン
なんで誰も声かけてこないの?
引っ込み思案なの?
どうやら私の覇道物語は幕を開けないらしい。
チョコさんごめんなさい。あなたの仇は、か弱い私には討てそうもないです。
三秒ルールなど認めない私は、泣く泣くチョコを諦めるのであった。
なんかもう授業受ける気しない。
その時、白い何かが横切った気がした。
「…ふむ。」
そうだ、森へ行こう。
迷いの森と呼ばれるその森は、昼でも暗く、中に立ち入ればたちまち方向感覚は狂わされ、何処に向かっているのか何処に居るのか分からなくなる。…という噂だ。
確かにここはいつ来てもあまり明るくはないね。まぁ、別に気にならないけど。
新種の生き物とか産まれないのかな?産まれてたら欲しいけど、早々、そんなもの産まれないよね。
歩くの大好き少女の歌を歌いながら、森をどんどん行く。
帽子被った人探そう。
美味しいお茶をご馳走になれるかな。
なんかパンケーキ食べたくなってきた。生クリームがアホみたいにのったヤツ。
ソースは何がいいかな?
ブルーベリー、ラズベリー、チョコレート、キャラメル…
今の気分は、砕いたナッツとチョコだな。
…おかしい。茶会会場が見当たらない。