【3】
昼も食べ、またいろんな店をブラブラ見た後は本屋へ。
暫く別々に本を見て集合。今回特に欲しい本がなかったな。と思ったらすばるも欲しい本がなかったらしい。
欲しい本がなかったと言ったら、すばるから何やら感じるものが。
「買わないから。」
なんだか今否定しておかないとダメな気がしたから、取り敢えず否定してみた。
本屋を後にしブラブラしていると、ダンディーケーキありますという貼り紙が。
どんなケーキなのか二人とも分からなかったから、多分食べたがるだろうな。
「喉も渇いたし、このカフェに入る?」
「うん。そしてダンディーケーキなるものを食べたい。」
そこは何種類ものコーヒー豆がケースに入って置かれている珈琲専門店だった。
コーヒーの良い香りがする。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ。」
こじんまりした店内はダークブラウンの木目を基調とした落ち着いた雰囲気で、クラッシックが流れている。
大人の隠れ家的店っぽい雰囲気だ。ゆったりした時間の流れに身を任せ、コーヒーを楽しむってとこかな。
メニューを見て分かったが、ダンディーケーキは、郷土菓子のドライフルーツケーキだった。
「郷土菓子なんだね。ーーあ、他にも郷土菓子がある。」
「珍しいね。ここって入ったことなかったから、こういうのあるって知らなかったな。」
「そうだね。もっと早く気づけてたら良かった。珍しいお菓子を見逃してたかと思うとちょっと悔しい。」
「お店は逃げないし、今日知れて食べれるんだから良いんじゃない?」
すばるはダンディーケーキだろうし、俺は何にしようかな?
「ダンディーケーキだけ?」
「うん。」
コーヒーはすごく拘ってるから美味しいだろうけど、食べ物系のレベルが分からないってのがあるから、それだけにしたんだろうな。
「どれ食べてみたい?」
実はまだハンバーガーでお腹いっぱいだから、 全部は食べれないと思う。てことで、すばるの希望の物にすることに。
「これ食べたい。」
「分かった。」
マスターの方を向けば視線に気付いて側へ来てくれた。
「御注文はお決りですか?」
「ええと、ダンディーケーキとーーー」
「お待たせしました。こちらがーー」
運ばれてきたコーヒーと、すばるが食べたいって言ったポルヴォロン。
個包装された物が3つ皿に乗っている。
早速食べようとしたところ、メニューを見ていたすばるに止められる。
「ポルヴォロンが口の中で崩れる前に、ポルヴォロンて3回唱えれば幸せが訪れるらしいよ。」
「へー。それって声に出して?それとも心の中で?」
すばるに1つ渡す。
「そこまで書いてない。でも食べながら声にって、ちょっと難しくない?」
「言えてる。これがパサッとしてた場合、声に出したら口から出そうだよ。」
人前でさすがにそれは嫌だ。
ポルヴォロンを早速口に入れる。口に含むとホロリと崩れ、溶けていく。柔らかいそれを味わいながら、すばるを見つめる。
幸せは既に訪れているけど、この先もずっと幸せでいられたらなって願いを込めて
ポルヴォロン
ポルヴォロン
ポルヴォロン
心で唱えた。