第79話.セクシーなのかキュートなのか知りたい乙女心
お昼も食べ終わったのでまたブラブラ開始。帽子屋さんや靴屋さん、木製雑貨店等を見た後、本屋さんへ立ち寄った。
近頃では魔法具で小説やコミックを読むのが主流で、紙の本は売れなくなったと言われているが、私はやはりこうして本屋さんに足を運び、実際に本に触れ、読みたいものを探すのが好きだ。
ただし、乙女なのでエロい系は魔法具ですが何か。
本を一緒に見て回るのはあまり好きじゃないので、暫し個々で読みたい本を探した後に合流。
「何か欲しい本あった?」
「読んでる小説の新刊とか出てなかったし、ざっと見たけど特に欲しいのがなかった。」
「新刊のお知らせくるようにしてないの?」
「知らないうちに新刊出てる時がよくあるし、登録しようかと思うけど、結局登録するのが面倒になる。三原君はしてるの?」
「してない。」
「一緒だね。欲しい本あった?」
「なかったよ。」
欲しい本がなかったとは本当だろうか。年頃の男の子なのに、セクシーなお姉さんの載ってるヤツとか買って、新しいオカズ増やさなくてもいいの?
見て見ぬふりの出来る気配り上手な私なので、安心して購入してください。
「買わないから。」
エスパーか。
ふと目に入った貼り紙を見ると
「ダンディーケーキ?ーーダンディーケーキって三原君は知ってる?」
「いや。」
「ダンディーケーキありますって書いてあるけど、有名なケーキなんだろうか。」
「喉も渇いたし、このカフェに入る?」
「うん。そしてダンディーケーキなるものを食べたい。」
扉を開けると正面にレジがあり、その前には約20種類程のコーヒー豆がケースに入って置かれている。
珈琲専門店だった。ーーあんまりコーヒーは飲まないのだが、ケーキのためだから仕方がない。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ。」
こじんまりした店内はダークブラウンの木目を基調とした落ち着いた雰囲気で、クラッシックが流れている。
どこも混んでいたというのに、ここはお客さんが一人だけだ。
中央にある大きなテーブルの6人掛けのところに、そのお客さんが座っているので、私たちはゆったりソファのところに並んで座った。
早速メニューを見る。ーーコーヒーへの拘りが凄そうなことは良く分かる。
コーヒーのお値段がかなりお高めである。学生は来ないだろうなと思う。
「これがダンディーケーキだね。」
ダンディーケーキは、ケーキの上にアーモンドをデコレートしたドライフルーツがぎっしりと詰まったケーキだった。
「郷土菓子なんだね。ーーあ、他にも郷土菓子がある。」
「珍しいね。ここって入ったことなかったから、こういうのあるって知らなかったな。」
「そうだね。もっと早く気づけてたら良かった。珍しいお菓子を見逃してたかと思うとちょっと悔しい。」
「お店は逃げないし、今日知れて食べれるんだから良いんじゃない?」
確かにお店は逃げないが、いつの間にか閉店して、別のお店になってる可能性はあると思う。ーーガラガラだし。