第67話.これだから美形ってヤツは
今日も三原君の作った美味しいお弁当を食べながら、話題は昨夜のテレビのことに。
「帰ったら妻が自分以外の男と居るとこに遭遇とか、衝撃すごそう。」
「どう考えても修羅場だね。」
「血を流しながら頑張って殴り合ったのに、結局捨てられる夫。」
「間男の方選ぶとか予想外だったね。浮気じゃなく本気とか。」
「捨てられたのに失いたくなくて、必死になる夫に涙を禁じ得なかった。」
「結局事態は好転せず、全て奪われ去り行く夫の背中の哀愁に、俺泣きそうになったわ。」
哀愁漂う夫に幸あれ。
修羅場でペシペシ叩き合う夫と間男の姿はちょっと可愛かった。嘴の攻撃も混ざり、途中から血まみれだったけど。
因みにペシペシは一秒で8回繰り出せるらしい。
あ、忘れるところだった。
「三原君。」
摘んできたブルーベリーを三原君の口へ。
「ん、甘いね。ブルーベリーなんて持ってきてたんだ?」
「学校のやつ。」
「それ摘んだらダメなやつ。」
「三原君。」
「何?」
「女にはどうしても譲れない思いが、時としてあるのです。」
「果たしてそれはこの場面で使う台詞だろうか。」
そんなこんなでお弁当も食べ終わり三原君と教室に向かっていると
「見つけた!」
誰かが何かを発見したらしい。良かったね見つかって。
「おい、お前ー」
「次の授業って何?」
「次の授業はーー」
「おい!」
三原君が声に振り返る。どうやら三原君を探してる人だったらしい。
「何?」
「いや、お前じゃない。」
人違いだった模様。後ろ姿で知り合いだと思って声かけたら、別人でしたってことあるよね。
友達だと思っていつものノリでいったら別人ていう時の気恥ずかしさ。
私も経験ある。
軽いノリで重いチョップを繰り出して意識刈り取ったら別人だった。
「なんで来なかったんだよ。」
「この人に呼ばれてたの?」
「呼ばれてない。」
「はぁ!?おまっ、分かるだろ俺の態度で。」
もちろん分かってたが、だからと言って従う義理はない。寧ろ何故見ず知らずの男についていかねばならないのかと問いたい。
知らない人についていっちゃいけません。ーーこれ常識。
自分の顔面の良さで常識なんてどうにか出来ると思ったのだろうか。
美形って結構神経図太くて図々しいヤツ多いよね。自分が呼べば絶対来るって思ってるから、ちゃんとついてきてるのか後ろを確かめもしない。
「まだ時間あるしちょっと付き合えよ。」
そう言って歩き出した。