第66話.どっちが少数派
狭い場所にお店等を設計する場合や古いビルだと、トイレの個室が狭いところが多い気がする。
座ってすぐ目の前にトイレットペーパーがあり、近すぎて取りにくい個室や、和式で便器を跨ぐと靴の幅+2センチほどの床の個室等ーーもう少しどうにか出来なかったのかと設計したヤツに問いたい。
トイレの個室も人生もゆとり大事。
そんなごく狭トイレに比べ我が校の個室は、便器からドアまで非常に遠い。
うっかり鍵を閉め忘れ、誰かに開けられそうになっても咄嗟にドアを押さえることが出来ないくらいには遠い。
誰だ設計したヤツ。何故緊急事態に対応可能な作りにしないんだ。
鍵を閉めても鍵が壊れている可能性も0じゃないので、小心者の私は設計者のせいで、緊張感に苛まれながら入らなければならない。
もういっそ潔く、ドアを閉めずに入るべきだろうか。最初から開いていれば開けられるという不安は解消だーー商業施設で手を洗いながら見た鏡越しの、個室で用足し真っ最中のお婆ちゃんと絡み合う視線が甦る。
うん、ドアはやはり閉めよう。見られながらの用足しという高レベルプレイは、若輩者の私にはまだ早いと思う。
見られながらと言えば、将軍様は見られながらう○こしてたらしいね。暑い時期は扇子でお尻を扇いでもらいながら。
なんという羞恥プレイ。ーー小姓に言葉責めされながらう○こするオッサンが一瞬だけ浮かんだ。
おはようからおやすみまで、いろんなことをやらなくてはいけない小姓ではあるが、オッサンのう○こするのを見ながら扇子で扇ぐとか、私が小姓たった場合を想像すると非常にやるせない気持ちに。
手を洗っていると個室から出てきた女子が、鏡で前髪を直して出ていった。
手を洗わない…だと…?
男子で洗わない不潔なヤツとかいるが、まさか女子にもいようとは。ーー手を洗わない派が最近の主流なのだろうか。
若干モヤっとした気分でトイレから出た。
「あっ、お前!?」
いきなり大声を出し周囲の注目を集めた人物は、ばつの悪そうな顔をした後、何事もなかったかのように顎をクイッとして『ついて来な』の意を示し歩き出す。
前を行く背中を眺めながら、この後のことをアレコレ思う。
この先に待つ楽しみにウキウキしながら歩き出した。