XXXVII 絶望③
背後で二人組が呻いている。
魔力の供給を止めずに、シーマの傷を確認した。
切り裂かれた服をナイフで広げる。
傷は胃の辺りから腸付近までの大きな傷だ。
血も流れすぎている。
これを何とかするには、魔法しかないだろう。
隙あらばマオが読んでいる教本には、回復出来る魔法は載っていなかった。
初級に載っていないのならば、中級の方だろう。
天使は全て覚えるまで次に進むな、と言っていた気がするが、構うものか。
シーマを助けられるならば、天使との約束なんて糞くらえだ。
残り少ない魔力を消費し、中級の教本を取り出す。
目眩がして視界がチカチカと点滅するが、気合で意識を保つ。
教本のページを捲り、他人を回復させることの出来る魔法を探す。
一番上の。破壊属性。ここら辺は違う。
ページを飛ばして、呪紋属性、集陣属性、治癒属性の魔法。
見付けた。これだ。
そのページを流し読みしながら、シーマへ実行する。
しかし、上手く成功しない。
魔力の枯渇を防ぐ為、少ない魔力でやっているが、成功する気配がない。
知らない理論も出て来て手を止めかけるが、続ける。
「…ぁ、まお…」
「…!シーマ!今助けるから!」
「ぅ、ううん。もう、だめだよ」
「駄目じゃない!出来るから!」
「ぁ、たしね。まおと出会ってから、幸せだったよ」
「喋っちゃだめだ!傷が…くぅ」
少ない魔力を更に消費したので、目眩に加え、頭痛や三半規管の不調がマオを襲う。
今の自分では、シーマは救えない。
そう、直感してしまった。
「まお、もういいよ…」
「い、嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ」
「…まおを一人にするのだけが、心残りだなぁ」
「ひ、一人にしないで。おねがいだから…」
「ぅ…。お姉ちゃん、眠くなってきちゃったよ…」
「いや、だ…」
「……まお、あなたは生きてね。約束よ」
「シーマが居なきゃ、嫌だよ」
「わが、ままね…。お、ねがい…ね」
シーマの目が、何も写さなくなり、血の流れる量も減った。
助け、られなかった。
もし、あそこで引き返していたら。
もし、今日外へ出なかったら。
もし、もし出会うことがなかったら。
…シーマと出会えたことだけは、否定してはいけない。それだけは、幸せだった。
引き裂かれた衣服を纏い、シーマを背負う。
「シーマ、帰ろう。ウチへ」
マオの呟きに返事をしてくれる人は、誰一人として居なかった。
家屋を後にする時、二体の死骸を一瞥し、視線を戻す。
シーマをウチへ、運ばなければ。
マオは冷たくなっていくシーマを背負い、歩き出した。
殺意を纏い、他者を寄せ付けないようにして。
今話でストックが切れたので、次回は未定です。




