XXXIII 希望④
「シーマ、あのね」
「うん?何?」
「話したいことが、ある」
自分が魔法を使えるということを打ち明ける。
シーマの話にも魔法や魔術の話は出て来なかった。
この都市でそれらがどんな扱いなのか知らないが、彼女には話しておくべきだろう。
「魔法、って知ってる」
「魔法?貴族様が使えるそうだね」
「ぼくは、水の魔法が使えます」
「えっ!?」
貴族、という単語が出て来たが、話して良かったものか。
マオはそう考えていたが、話してからでは遅い。
シーマの返答を、マオは不安そうにしながら待った。
「凄いじゃない!見せて!」
「う、うん…」
予想とは違う反応に、マオは戸惑った。
そんなマオにシーマは興奮した様子で、魔法をせがむ。
「出すよ…?」
マオは手で器を作り、そこに少量の水を落とした。
それをシーマに見せる。
「凄い!賢いとは思ってたけど、マオってば貴族の出だったのね!」
「…ち、違う。貴族ではない」
「そうなの?魔法といえば貴族って感じがするけど」
「違うけど、使える」
魔術は貴族が隠蔽しているとか、天使が言っていたが。
もしかして、一般には魔法も魔術もごっちゃになって、噂として広まっているのだろうか。
「あ、マオに料理を任せてからお水が美味しいと思ったけど、そういうことね」
「うん」
「凄い!ねえ、幾らでも出せるの?」
「せ、め、体力が無くなって動けなくなるから、少ししか」
「…それ、大丈夫なの?」
「時間を置けば、回復するから」
「あたしは魔法のこと良く分からないけど、それって死んじゃう?」
「限界を超えて使えば、そうなる」
「…マオは私より賢いから分かっていると思うけど、あんまり使わないでね」
「…ん、分かった」
シーマに魔法のことを話したが、別に拒絶されたりはしなかったな。
成長した今でも、魔法の使える量というのは余り変わりがない。
魔法を使い放題とはならないようだ。
「あ」
「ん?マオ、どうしたの?」
「魔法のことは、秘密ね」
「分かった秘密ね。ふふっ」
シーマなら不特定多数に言い触らしたりしないだろうが、念のためだ。
二人だけの秘密という形になるのだろうが、何だかむず痒いな。
「あ、そうだ」
「どうした、シーマ」
「明後日も売りにいくんだけど、マオもついてくる?」
「え、外にってこと?」
「そうよ」
シーマから、そう提案された。
自分はこの穴へ来てから、一度も外に出ていない。
シーマが止めたということもあるが、一番は鱗の人間に追い掛けられて外は怖い所だ、と思ってしまったからだ。
だが、外に出れないのはいつか克服しなければいけない。
この機会に外に出てみても良いかもしれない。頼れるシーマがいるのだ。
「行く」
「分かったわ。お姉ちゃんのカッコいいところ見せてあげる」
その会話を終えて、二人は眠りについた。




