XXXII 希望③
二人で寝床へ行き、横になった。
そして、お互いに今日あった出来事を話し合う。
「シーマ。バッタは全部使った。ネズミは八匹」
「八匹か。じゃあ後十二匹だね」
「十二匹」
「明日補充しようか」
「うん、分かった」
「マオ、言葉上手くなってきたね」
「そう?」
自分があった出来事はこれくらいだ。
危ないことをしてシーマに心配を掛けてしまうし、そういったことが出来るとも思えない。
マオが話終わったので、シーマが話を始めた。
「シーマ。どうだった?」
「全然だよ。アイツどんどん買取値を下げてくる。そろそろ変えようかな」
「…出来るの?」
「出来るね。モノによって持ち込む所は変えてるよ。少しでも高く買って貰わないと」
「そうなんだ」
知らなかった。
シーマの話を聞いて、一円でも安いスーパーへ赴く主婦を思い出した。
逞しいというか、頼れるというか。
自分なら、適当な所でさっさと売ってしまうだろう。
マオは益々、シーマへの尊敬を強めた。
「そろそろ寝ようか」
「…」
シーマがローブを脱ぎ、脇に置いた。
ローブを脱いだことで、フードで押さえられていた獣耳が姿を現した。
シーマは、普通の人間ではなく、狼系の獣人族であった。
シーマはローブを寝ている間も着ていたのだが、ある日フードが外れて獣耳が見えてしまったのだ。
片方が削れて半分までしかなく、左右非対称な獣耳を。
マオはシーマが人族で無いことが分かって驚いたが、以前骸骨や鱗の人間を見ていたので、ショックはそれほどでも無かった。
シーマが起きてから、耳に付いて聞くと、片方の耳が削れている理由を話してくれた。
その理由はこの穴を見付けた当初、寝ている間にオオムカデにかじられてしまったそうだ。
少しかじってオオムカデは満足したようだが、その時から耳が片方無いらしい。
今まで見せなかったことから、気にしていると考えたマオは、耳を触らせて欲しいと何度か頼んだ。
何度目かに、その頼みは承諾され、自分とまた違った黒さの髪や耳の柔らかさを誉め倒して、今に至る。
今ではシーマの方から触らせてくれるようになっている。
前世でマオは動物は嫌いでは無かった。耳をフニフニと揉み、満足して寝る。
これがマオのささやかな娯楽となっていた。
「どうした?マオ。じっと見て」
自分は隠し事が沢山ある。
転生の件から魔法の件まで、色々話していない。
シーマだけ自分のことを話してくれて、これではフェアでは無いだろう。
転生の件はもう少し後で良いとして、魔法の件は打ち明けよう。
マオはそう決心した。




