XXVII 最底辺⑩
シーマから知らない単語について教えて貰ったが、理解出来なかった。
地下だとか、闇だとかの単語が説明で出てきたが、余り良いイメージの単語では無いのだろう。
「…分からない?」
「分かる、ない」
「…仕事を手伝ってくれたら、言葉も教えるわ」
「仕事、案内」
「分かった。コッチ、来て」
仕事を手伝えば言葉を教えてくれるらしい。
正直教えて欲しいが、ヤバい仕事なら無理してやる必要はない。
そう考えていると、シーマが歩みを止めた。いきなり止まったものなので、マオはその背中にぶつかってしまった。
「ちょっと。大丈夫?」
「大丈夫」
「あなた小さいんだし、疲れたなら言いなさいよ」
「大丈夫」
確かにちょっと疲れているかもしれないが、まだ大丈夫だ。
それよりも仕事の方に興味がある。
これからあの部屋に戻る訳にはいかないし、帰り道すら分からない。
流石に宿なしは辛いからな。
「そう。…暗いから、足元に気を付けなさい」
シーマは横穴の前で止まり、後ろを振り向いて言った。
横穴はこの空間より、明かりがかなり少ない。
ここに入っていくのだろうか。
シーマが躊躇なく横穴へと歩いていく。
置いていかれないよう、マオはシーマの歩幅に合わせた。
「着いたわ。これを集めるのが仕事」
「…どこ?」
横穴の途中でシーマが止まった。
薄暗くて良く見えないが、何もない場所だ。
土でも集めるのだろうか。
「これ。**ね」
シーマが見ている方向を良く観察してみると、苔らしきモノがびっしりと生えているのが確認出来た。
この分からない単語は、苔、なのだろう。
「こ、け。こけ。苔」
「そう苔。これを剥がして集めるの」
そう言うと、シーマは何処から厚い布を取り出した。
その布を壁に根を張っている苔の下に配置し、素手で落とし始めた。
ポロポロと簡単に苔は落ちていくようだ。
一定量、布の中に苔を集めた後、シーマはそれを折り畳んで懐へ仕舞った。
「これは**作用があるのよ。これは***だから食べちゃだめ。下手すると死んじゃうわよ」
「死ぬ。分かった」
「…そういう言葉は分かるのね。なんとも中途半端な」
ネガティブな言葉は優先的に覚えたからな。
そういう言葉に敏感になれば、危険からは遠ざかれることがあるだろう。
苔は食べてはいけないということは理解出来た。
「終わったから戻るわよ」
「はい。理解」
「言葉ちょっとおかしいね。後で教えてあげる」
来た道を戻るシーマの後ろに着いていき、先程の空間へと戻る。
そこまで戻って来るとシーマが振り返って、下から顔を覗き込んできた。
「やっぱり、疲れてる」
「大丈夫」
「大丈夫じゃないでしょ。コッチに来なさい」
シーマに手を掴まれて、別の横穴へと引かれる。
疲れているのは確かだが、まだ動ける。
そんな考えとは裏腹に、マオは大人しく横穴の中へと引き摺られていった。




