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転生トラック運転手は不憫  作者: あの日の僕ら
序章 前世の記憶
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II オモテ②

テンプレ転生です

 目を瞑っていた青年だが、一向に痛みが来ないことに違和感を覚えて目を開ける。

 だが、目を開けて飛び込んできた景色は海辺の街では無く、一面真っ白な空間であった。


「は?」


 トラックは、街は、自分は、どうしたのだろうか。まさか全て夢で、今もその続きであったりするのだろうか。


【あっ、起きた?】

「!」


 青年の後ろから、脳に直接響くような声が掛けられた。振り返るが、誰も居ない。


【下だよ。下】

「あっ、…女の子?」


 少し下に視線をズラすと、赤いワンピースの女の子が立っていた。足元には紙袋やビニール袋、中に入っていたであろう色々な種類のお菓子が落ちている。

 間違いない。先ほど助けた女の子だ。そう青年は感じた。この場所はどこだろうと青年が質問を投げ掛けようとしたその時であった。


【突然だけどね。君は死んだの】

「…は」

【君はあそこで死ぬ"運命"では無かったんだけど、ねぇ】


 理解出来ない。正確には理解したくない。ここが死後の世界ならば、父さん、母さん、皆と二度と会えなくなるのだ。そんなのは、嫌だ。


「い、生き返ることは…」

【申し訳ないけど、出来ない】


 生き返ることは出来ない。それを聞いて青年は少し冷静になれた。

 女の子に聞かなければならない事が沢山ある。


「…ちょっと待ってくれ。君は何者だ?」

【私?私は『ミカエル』。世界を統べる"神様"だよ】

「神、さま」


 目の前の女の子が神様など、到底信じられない。だが、不思議と、否定は出来なかった。女の子が、彼女が纏う空気のようなモノが疑問など吹き飛ばしてしまう。


「神様、僕はなぜ生き返ることが出来ないのでしょうか。神様ならそれくらい出来ないのですか?」

【出来ない。"規則"なんだよ。ごめんね】

「そう、ですか…」

【だが、君の死は私の手違いとも言える。本当は生き返らせてあげたいんだけど。…代わりに提案があるんだ】


【君、異世界に興味は無いかい?】


 異世界。ラノベで良く読むアレ、だろうか。

 興味がないと言えば嘘になるが、家族や友人を置いてまで行けない。


【今ならオマケに強靭な肉体と膨大な魔力も付けるよ。お詫びだからね】

「魔力、ですか?」

【そう魔力。今から行く世界はソレがあるんだ。…そうだ、魔法適正価も最大にするよ】

「あの…」

【ああ、言語理解も忘れてはいけないね。それと適当な能力を此方で見繕っておくよ】

「…あの!僕は行けません!」


【…は?】


 異世界に行くことが確定しているような言い方だが、前の世界に未練がたっぷりある。

 父さんにも、母さんにも別れを告げられずには行けない。


【好奇心はある。だが未練がそれ以上に残っている。…そうか】

「何を」


 神が手を伸ばし、青年の腕に触れた。その瞬間、身体が軽くなり、視界が一気にクリアになった気がする。

 何かで悩んでいた気がするが、今は異世界だ。なんたって異世界転生だ。小説のようだ。


【おお、興味が出たようだね】

「はい、行きたいです。異世界!」

【よしよし。うん、準備が出来たようだね】


 青年の姿が白い空間へと溶けていき、やがて跡形もなく消えた。もう、その空間には、神も、落ちていたお菓子も、誰も存在しなかった。

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