XVI 光の勇者①
青年が気が付いた時には、白く広い部屋に立って居た。
ただひたすら広い部屋。いや、ローブ姿の人間が何人か佇んでいる。
「ここは…」
「おお!貴方が勇者殿ですか!なんと神々しい!」
いつの間にか、青年の目の前にローブの老人が接近していた。
青年は何故自分に起こったことを思い出し、ここが異世界だということを理解した。
「え、と。勇者、ですか?」
「はい!ミカエル様からご神託を預かっております!」
ミカエル…思い出した。
あの時の自分は、自分でないような感覚を受けていた。一応、神様が触れたことが原因だとは思っているが。
「では、ご案内いたします。着いてきてくだされ」
「え、はい。分かりました」
ぞろぞろとローブ姿を引き連れて、青年は誘導される。端から見たら異様な光景だろうな、と青年は思った。
誘導された先は、地面が土の空間。そこでは、何人かの人間が木剣で斬り合っていた。
「ガスパー殿!勇者ですぞー!」
老人が声を上げると、一人の男が振り向いた。
その男は筋骨隆々で、まるで熊みたいだ、と青年は思った。
「む!ソナタが勇者殿か!いやあ、会いたかったですぞ!」
「勇者殿、彼はガスパー。守護隊の隊長です」
「早速だが、一勝負しないか?」
「…えっ!?」
何が早速なのか分からない。それどころが、今の服装は学生服に通学用の靴だ。
とても運動出来るような服装ではないし、勝負などしたこともない。
「勇者殿、加護を使うのです」
「えーっと、加護、ですか」
加護。心当たりのある力を青年は感じていた。
これが、神様に貰った力なのだろう。
力の一つに意識を傾ける。すると、光の剣が手の内に握られていた。とても、軽い。これなら、自分でも振り回せそうだ、と青年は思った。
「なんと!光の剣!これが聖剣ですか!」
「おお!凄い!なんて力の波動だ!」
その剣が出現したことで、周りがざわめいた。
自分はこの力が理解出来ているが、知らない人間からしたら驚くだろうな、と考えに至る。
その威圧感を放つ剣を引っ込めて、改めてガスパーへと向き直る。
「それで、やるんですか?」
「…ええ!こちらは鉄の剣で良いですな!」
ガスパーと青年は模擬戦を始めた。
青年には剣の知識など無いに等しいが、付与された身体能力によって斬撃を回避していた。
対してガスパー。青年は剣の技術が無いのは直ぐに分かったが、無理矢理剣筋をねじ曲げたり、とんでもない加速をするので上手く対応出来ないでいた。
何度か剣を交え、ガスパーの鉄剣が絡め取られる。その首筋に聖剣が添えられて、降参の合図を示した。
「素晴らしい!名前をぜひ教えてくれ!」
「ふぅ。名前、ですか?」
「ええ!感動しました!」
「…工藤悟です」
青年は、自分の身体がここまで動くことに高揚していた。この世界でも、何とかやっていけそうだ。そう感じた。




