表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生トラック運転手は不憫  作者: あの日の僕ら
序章 前世の記憶
15/37

XV ウラ⑬

「はぁ。もう、よろしいですか?」


 目の前の天使が怠そうな雰囲気を纏い始める。

 他に無いだろうか、と思ったが、最初よりは色々引き出すことが出来た。

 正直不安しか無いが、決めたのだ。腹をくくり、天使の問い掛けに頷いた。


「え?はい!それでは転生させますね!」

「あ、ちょっと待て」

「…今度はなんですか?」

「本を収納出来るんだったら、ナイフとか拳銃とかいけるんじゃないかなーって思ってな」

「…この術式では、これだけで容量がもう一杯なんです!私の力を少し削って魂領を拡張しているんですよ?これ以上は、無理です!」


 天使は明らかにイラついている。

 そんな天使の姿に天野は恐縮してしまい、口をつぐんだ。


「…もうよろしいですか?」

「……はい。あ、そういえば、ここって時間流れているんですか?」

「…時間ですか?止まってますよ。ここはそういう空間です」

「それなら、この本を読んでも良いか?」


 天野が両手に抱えた教本を前に突き出した。

 その言葉に天使は言葉を無くし、頭を抱えて唸りだした。


「時間は止まってますが、駄目です」

「向こうの言葉を覚えるだけだからな、良いじゃないか」

「…はー、それだけです。全て理解するまでは待てないですよ?」


 天野は許可を貰い、床に腰を降ろした。

 薄い本を床に広げて、早速内容を確認し出した。

 それを、天使が冷めた目で見つめる。


「…あ。言っときますけど、教本は順番に見て下さい。その本の全てを理解したら、次の段階へ進んで下さいね?」

「それは何でなんだ?」

「初級はそんなことは無いですが、難易度が上がっていくにつれて制御が難しくなります。限界を超えて魔力を絞り出すと死んでしまいますので」

「え、死ぬのか?魔力容量が拡張されるとかじゃなくてか?」

「限界までは良いんですよ。超えてはいけないだけです。初級に乗ってる魔法でも、死ねますからね」

「…そうなのか」

「各段階の教本に魔法に関する理論も載っているので、活用してください。計算が出来るなら、大体理解出来ると思います」


 危なかった。限界を超えたトレーニングで魔力が増えたりするものだと思っていた。

 転生して直ぐに死ぬなんて、洒落にならない。


 飛ばして読まないようにしよう、と天野は心に誓った。

 それとは別に、翻訳の教科書を読みながら天使に質問をする。


「なあ、この本紙じゃないよな。書かれている文字もインクっぽく無いし」

「ちょっと強いだけの紙ですよ。インクもちょっと落ちにくいだけです」


「ヴ、『ヴルカンの炎』か。これは基本四種?の魔法なんだよな。随分な中二ネーミングだな。誰が付けたんだ?」

「それは全ての基本となる炎魔法です。名前は創造神様が名付けましたが…何か?」

「…いや、何でもない」


「…この文字はミカエルを奉る『唯一神教』を表しています。注意してください」

「あ、そうなのか。ちっとも覚えられなくてな」

「…真凰さん…」


 いよいよ天使の顔が怒りを通り越して、悲壮に暮れ始めた。


 天野は流石にもう良いと判断して、送って貰うことに決めた。


「はあ、やっとですか。…【天野真凰、貴方をエトルワールへ転生させます。どうか、幸運に恵まれますよう】」


 天使の声が途中から異質なモノに変化する。

 その祝言が終わった瞬間、天野の身体が空間に溶けていった。それを見ている天野は期待と興奮と不安に包まれながら、やがて消えていった。


 天野が消えたその空間で、残された天使が独り言を漏らしていた。


「…生きやすい世界ではありませんが。どうか、どうか前より、まともな人生を歩んでください」

主人公は、かなり図々しい描写になってしまいました。

表現というのは難しいですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ