XIV ウラ⑫
「魔法が上手く使えるようになる才能とかないのか?転生にはそういった能力が付き物だろ?」
天野はマンガやアニメといったモノは好きであった。仕事を初めてから触れる機会が減ったが、こういう話は何度も見たことがある。
神の手違いで死んで転生。能力や才能をプレゼントされ、そのチートを使って異世界を緩く冒険する。
そういうお約束がこれにもあっていいと、天野は思ったのだ。
「…残念ですが、私にそのような力はありません。あの青年はミカエルによってそういう力を授けられたようですが」
「青年。牽いた学生だな。どういう力だ?」
「隠蔽が施されているので、詳しく分かりません。ですが、かなりの量を付与したようですね。力の源が彼女なので、それが尽きるまで使えるでしょう」
「…俺には?」
「…何も。申し訳ないですが…」
残念ながら、そういったチート能力は何もないようだ。融通の効くという魔法や言葉くらいは使えるようになりたかったが。
駄目元で、天野は別の提案を持ち掛けた。
「魔法の使い方…そんな本とかも駄目かなのか?知識ゼロよりよっぽど違うと思うんだが」
「…少し、待っていて下さい」
天使が後ろを向き、何かをやっている。光が漏れているが、一体どうしたのだろうか。
少しごねすぎたか。と天野は少し反省していたが、自分が楽になるのならば、必要だと結論に達した。
光が収まり、振り向いた天使の腕には三冊の本が存在していた。厚さはそれほどでもなく、地味な色をしている。
「これは、私が纏めた教本です。有用な魔法を72種類、難易度順に載っています」
「今作ったのか?」
「はい。…ですが、転生先の身体によっては、大魔法は使えません。気を付けてください」
天使から本を受け取り、その内の一冊を広げる。
幾何学的な模様が並んでいる。…文字、であろうが、全く読めない。
「それは、多くの人族が使用している文字です。ミカエルの守護する者の勢力はとても強いので、大抵はこの文字を使用します」
「…言葉が違ったら、どうなんだ」
「…覚えておいて損はないですよ」
非難する意思を込めて天野が天使を見つめる。
はぁ、と一つ溜息をついた天使は、何もない空間に手を翳す。すると、一冊の薄い本がその手の内に出現していた。
「これは、日本語と向こうの言葉の分かりやすい翻訳が書かれた本です。…真凰さんの送り込む世界は、ミカエルの大きな力の源です。期待して、ここまでしているのですよ?」
最初の態度が嘘であったかのような振る舞いだ。
だんだん、化けの皮が剥がれてきてるな、と天野は感じた。
「このままでは持ち込めませんね。…真凰さんの魂の加工に、空間魔法を加えます。その都度魔力を消費しますが、これでいつでも教本を取り出せるでしょう。はぁ」




