猫背でも背伸びはする。
これはどこにでもいる、いそうな奴なのか分からないが、そいつの話だ。青春を謳歌しながら、少しずつ進んでいく。
「「長城、長城、長城、長城、長城、長城、長城、長城、長城」」
2人に何度も呼ばれ俺は振り向いた。
一人は学校のマドンナとでもいえるほどのかわいい双子の一人で、天然だ。
「あー、今なんか失礼な想像したでしょ~」
「お前は俺の心が読めるのかよ」
「いや~、読めないけど顔に出てたよ。そんなことより川本が呼んでるよ」
その川本はというと、特にかわいいというわけでもなく、特記事項がない。
「長城~、私にも失礼なこと考えてたでしょ~」
「お前らは二人して俺の心が読めるのかよ」
「読めなくてもわかるよ」
「「ね~っ」」
「で、なに?」
「猫背やめな、長城」
「だって寒いんだもん」
正当な理由だ。寒いのだから、わざわざ正しい姿勢になんぞなる理由など一つもない。
「いや、だらしない」
おっと、こちらも正当な理由だ。だが、
「そしたら、猫は猫背できなくなっちゃうじゃん」
「わけのわからない理屈言ってんじゃないの。だらしないのはだらしないんだから」
「まぁ、いいじゃん?」
このまま話しても勝てなさそうだから逃げる俺。弱いな。
「そういえば田澤眼鏡外したね」
「えっ、あっ、うん」
ほんのちょっぴり顔を赤くしたと思ったら、
「ちょっと長城、そうやって話しそらそうとしないの」
「おっと、お嬢さんたち、そろそろお時間だぜ。教室に行ったほうがよろしいのでは?」
「まったく、今回のところはこれくらいにしといてあげるけど、ちゃんと直しなよ」
「じゃな~」
「うん、じゃあね」
最後は田澤の笑顔の返辞で会話が終わった。
「ほんっとに、なんでこんなに冬は寒いんだ?」
教室にいた佐木に当たっていた。今日の昼休みは、授業が長かったためいつもより30分遅く、腹の虫が活発に活動していた。
弁当を食べ終え、俺はある人を訪れるために教室を離れた。方法はまず、部長に部活について話をしに行き、その後東条とゲームの話をしながら拝もうと思っていたんだが、
「お前のためにいい話持ってきてやったんだから話しな」
その声の主は川本だった。そしてその隣なりに立っているのが、川本一押しの鈴原だ。今の俺にとってはいい迷惑だが。ただ、鈴原と俺の面識が全くと言っていいほどないため、話す話題もなく気まずい雰囲気になるだけだ。まぁ、容姿は可愛いと思うんだが、話したことが皆無なために性格とかを全く把握できないせいで、行為を向けることはまず難しい。
キンコーンカンコーン
ちょうど予鈴が鳴ってくれて、俺はやっとこの気まずい環境から解放された。