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~人と人を繋ぐもの~
ある日。僕の体から糸が出ていた。指から、肩から背中から。
それは、遠くまで伸びているようだった。
一本の糸は父に、一本の糸は母にもう一本は妹に繋がっていた。
それらの糸は喋るとびりびりと振動して、たわんだ。
不思議と糸同士はなぜか透明になって絡まない。
そうして、僕のこの糸が見えるのは僕だけのようだった。
母に訊いたら、平気な顔で目玉焼きを作りながら、
「そんなの見えないわよ」と一瞥した。
父に訊いたら、
「夢でも見てるのか」
とひげを剃りながらあくびをするという器用な芸当を披露しながら僕にそう言った。
どこまで行くのというような、長い糸まである。
それは山のずっとむこうのむこうまで続いていて、青い空に吸収されて消えていった。
僕をつなぐ糸はたくさんあるのに、
でも絡まないのだ。
この糸は一体何なのだろうか。