第8話
気がつくと真っ白い部屋にいた。
ー「お疲れ様、ツバサ。あなたは本当に優しいのね。」
目の前の女性が涙を浮かべている。
何にも分からない。ツバサ・・・?
俺の名前か?なんで泣いている?
ー「ようこそ、ディーラーの世界へ。」
ディーラー?
何も思い出せない。
「あなたはどなたですか?ここはどこですか?」
記憶も、何もない俺は目の前の女性に質問することしか出来なかった。
ー「あなたに自己紹介するのは2度目ね。サヤカよ。ここは夢の中の世界。」
ー「私も、あなたもディーラー。ゲームを進行する者よ。」
サヤカと名乗る女性は、少し寂しげに教えてくれた。
ただ、突然すぎて何が何だか分からない。
ー「あなたには記憶は残っていないから理解できないでしょうけど、ポイントを全て失ったの。」
”00 Game Over”
ぼんやりと何か思い出しそうだった。
ー「あなたは、元は私の契約者だったの。説明はあとでまたするけど、ポイントを全て使い切るとディーラーとして夢に魂を縛られるの。」
ー「記憶喪失は、そのショックよ。」
次々並べられる言葉を、俺はただただ聞いているしかなかった。
8割くらいは理解出来なかった。
本当に今すぐ休みたかった。
「す、すみません。とりあえず今は休ませてくれませんか?」
そういうと、サヤカは目を丸くしたあと、再び涙を浮かべ悲しげにこういった。
ー「・・・良い夢を。」
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無、無、無、無、無。
寝ても何にも感じない。夢もない。ただただ時間を使うだけ。
現実に実体を持たないと、こんな感じになるようだ。
つまり、どうやら俺は死んでいる人間らしい。
ただ、普通と違うのはポイントを使い切って死んだっていうところ。
ポイントを使い切った俺にはディーラーという使命が待っていた。
まさに夢に縛られる身となったわけだ。
そして、ディーラーは、契約者を持つことでやっと一人前ということらしい。
この世界での通貨はポイント。
ようは契約者とのゲームで発生するポイントのやりとりで生活していくということだ。
はあと深いため息をついた。
こんなことになるなんて、俺そんなに生前悪さしてたのかな。
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ー「俺と契約して、かくれんぼしないか?いいことあるぞ。」
面倒な説明は省いて、俺は単刀直入に尋ねてみた。
あとで、少し変態に聞こえるって、サヤカに怒られた。
夢の世界は、きらきら輝いて、青く晴れ渡っていた。