第6話
今日はどんな夢をみようか。
最近、ユウマが明晰夢ってやつに興味を持った。
毎日日記をつけているらしい。そこまで熱くなるのは久しぶりじゃないか?
その影響か、俺もなんだかよく夢を見るようになった。
深層心理ってやつかな?全くみない日もあるが。
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あいつみたいに、特別訓練はしていないが夢の中では自由だった。なんでも出来た。
「焼肉くいてえ〜ユウマ〜」
夢の中でそういうだけで、焼肉を食べに行く夢になる。
幸福感に包まれながらも、これは”夢だ”と自覚していった。
ー「・・・しを見つけたときにみた・・・・・・実になるの。」
途中、頭の中で何か思い出せそうになっていた。
ー「契約完了したわ。」
思い出した。
そういえば昨日の夢はそんな夢だった。
あの夢を100%信じるわけではないが、確かめてみたくなった。
この夢で彼女を見つけてみよう。
手っ取り早く彼女が現れるように望んでみようか?
「みつけた!」
かくれんぼ定番の宣言をしてみたが、何も起こらない。彼女の名前なんて知らないんだから。
ただ、顔を思い浮かべても似た人すら現れないあたり、どうやらこれは無駄な気がする。
まあいつも通り夢を見てればいいか。
深く考えずに、目の前のユウマとの会話を始めた。
「お前そういえば、彼女居ないよな?」
「いたら毎日のようにツバサと遊んでないよ。」
すこし不機嫌そうに答えると、いい子居ないかな、とため息を漏らしていた。
「どんな子が好みなの?」
「うーん、優しくて、髪が長く・・て・・・。」
ユウマは途中まで言いかけると、口を開いて固まっていた。
目線の先には、確かに優しそうで、髪が長い、綺麗な眼をした女性が居た。
キョロキョロしていて、どうやら道に迷っているようだ。
赤いリボンがよく似合っていた。
「ご指名の子いたな。」
すこし意地悪げに笑って、友人の出会いを楽しんだ。
「どうかしました?」
真っ先に彼女のもとへ助けに向かうユウマをみて頼もしくなった。
あいつも男らしいとこあるじゃん。
彼女はどうやらある喫茶店を探していたらしい。
喫茶店の場所はそう難しくない場所にあった。夢の中だから、ご都合展開なのかもしれない。
「あの、またお会いしたいので連絡先教えてくれませんか?」
ユウマがかなり積極的になっている。一目惚れかよ!
彼女はすこし恥ずかしがりながらも、ゆっくりと頷いた。
「あ!ずりーぞお前!」
俺はからかい気味にユウマの背中をどんと叩いた。
ふと喫茶店の中に視線を移すと、窓際の女性と目が合った。
あ・・・・・
ー「見つかっちゃったわね。」
その女性はすこし嬉しそうにそう言った。
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目が覚めると、謎の幸福感に満たされていた。
部屋のデジタル時計は
3/28 7:03
になっている。もう朝か。
重い腰を上げカーテンを開ける。
夢の中の出来事を詳細には思い出せないが、”見つけた”。
それだけは頭の中に残っていた。