第5話 大学生 ツバサ
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気が付いたら、真っ白い部屋にいた。
ー「正夢って、信じるかしら?」
後ろを振り返るとなんともセクシーな女性がいた。
「そんな気がするだけで、気のせいだろう。」
すぐに答えた。
ー「あら、夢がないのね。でも、夢の出来事が現実になるって奇跡、可能なのよ。」
彼女は続けてこう言った。
ー「私と契約して、ドリームゲーム、参加してみない?」
ドリームゲーム?宝くじのドリームジャンボみたいなものなのか?
夢が現実になるって言ったか?
彼女の言葉を整理していくうちに、だんだんと頭が冴えてきた。
同時に、ここは明らかに現実ではないことが理解できた。
「そんなうまい話には、必ず裏があるよな。」
ー「あなた飲み込み早いのね。普通理解が追いつかないわよ。」
ー「リスクはほとんどないわ。あなた次第。」
いまいち信用できない。どこかの誰かと違っておいそれと信じることが俺にはできなかった。
「リスクがないって、信用出来ないな。それにここは現実じゃない。」
ー「あなた次第って言ったでしょ。言葉通りよ。」
「じゃあドリームゲームってなんだ?もう少し詳しく教えてくれよ。」
当然の疑問を投げかけた。
ー「私とかくれんぼをするだけよ。夢の中で私を見つけたときにみた夢だけが現実になるの。」
「見つけれなかったら?」
ー「何も起きない。いつも通りの夢になる。それだけよ。」
彼女は薄い笑みを怪しげに浮かべている。いや、疑っているから怪しげに見えるだけで、普通に笑っているのかもしれない。
「いまいちリスクのつながりがわからないんだけど・・・。」
ー「あなた悪夢って見たことない?」
彼女の問いで察した。自分次第ってそういうことか。
悪夢を見たときに、彼女を見つけてしまうとそれが現実になるってことか・・・。
つまり、自由に夢を見れない人にとってはまさにギャンブル。
死ぬ夢なんてみた日に彼女を見つけたら・・・。
「もし死ぬ夢だったら、どうなる?」
彼女は無言だった。それが答えだった。笑みは消えていた。
「わかった。契約しよう。ドリームゲームに参加する。」
ここまで理解しておいてすんなり受け入れたのには理由がある。
俺には自信があった。好きな夢を見る自信が。悪夢なんて小さい頃だけで、もう何年も見ていない。
ー「契約完了したわ。気をつけて、あなたのポイントが無くならないように。」
最後の最後でものすごく重要なことを言われた気がした。
それについても尋ねようとしたが、すでに彼女を見失っていた。
ただ、なんとなく察しはついた。こんな奇跡の力が無限に使えるわけがない。
何かしらの制約はあるだろうと・・・・。
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気が付いたら、自室の天井を見つめていた。いつのまにか夢から覚めていたようだった。
さっきのは夢だったが、どうも現実感があって不思議な感じだった。
同時に寝足りなさから、迷わず二度寝した。
目が覚め、携帯を見ると、もう15時を回っていた。
よく眠った!春休み最高!
今日も何もないし、ゲームでもしようか!
最近買ったゲームをするために、コントローラーに手を伸ばした。
本当によくあることだと思うが、このときにはもう夢の内容なんて一切忘れていた。
契約したことも。