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第七十七話 レイの能力




「力の根源ね……」

「……無限、普通は有り得ない。そんな資源、どの世界にも無かったのを確認している。私はお兄ぃと様々な世界を回ってきたから、わかる」

「ククッ、それはどうかな。世界には無くても、自分が生み出しているかもしれないだろ?」

「……それは嘘。神力は人間であった貴方では足りないと、大天使が証明している。だから、他から持ってきていると考えるのが普通」


 レイの言う通り、大天使ミカエルが神力は人間の元からあった生命力だけでは、生み出せないと説明している。なら、その力は他から使っていると言う証明となる。しかし、その無限は何処から持ってきているのかがまだわかっていない。


「へぇ、そこまでわかっているのか。確かに、この無限の力は自分から生み出していないな」


 アリスは認めた。自分で生み出していないと。だが、その力は何処から持ってきているのかが問題だが――――




「どうせ、知ったとしても、何とかすることは無理だな」




 アリスは易々と答えを教えてやるつもりも、考えさせる時間も与えはしない。それでも、アリスの力の根源を見つけようとするレイは開始された攻撃を必死に避けていく。レイの身体能力は人間だが、魔王と同等の力を持っている。しかし、ミディには劣ると言ったところだ。その身体能力で避けるのは無理だと知っているので、さっきのように、アリスでさえも察知出来ない動きで攻撃を避けていく。


「全く、面倒な動きをするな」

「……即死級の攻撃を一度でも受けるにはいかない」

「しかも、魔力が減った感じもしないな。魔力を使っていないのは有り得ないから、何らかの方法で魔力を供給しているか、察知できないぐらいに微々たる魔力で発動しているのか……」


 レイがやっているように、アリスも相手の能力の正体を探り始めた。『武蓮王マナエスト』の能力をそのまま使っていると思ったが、少し違うようだった。その能力は、中間を無くすだけで実体を別の場所を移すことは出来なかった筈だ。その力を持っていた時に確かめていたので、レイの能力は『武蓮王マナエスト』による能力ではない。おかしい事が一つ、レイから魔力が減ったような感じがしないことだ。チラッとゼロの方を見てみるが、まだ魔力が完全に回復していないからなのか、動く様子を見せてはいなかった。


「ん、回復が遅いな――――…………成る程、供給先はゼロからか。待てよ、その力は神之能力による物だな?」

「…………」

「沈黙は是と受けるぞ」


 レイは表情に出していないが、驚いていた。まさか、アリスが短時間で有益な情報を得てしまうとは思っていなかったからだ。アリスが言っていたことはまだ正解には遠いが、全く外れているとは言えなかった。

 アリスは思考を巡らせていても、攻撃は息もつかせない程に苛烈に放ち続けていた。そのせいで、レイは思考できても反撃まではいけなかった。なにせ、アリスは放つ攻撃の殆どが即死級なのだから、避け損なうと終わってしまう。

 その間に、アリスはレイの能力を観察し続けて、思考していく。そして、正解へ近付いていく――――


「よく見れば、周りにもう一つの結界みたいのがあるな。発動したのは、タイミングを考えれば、ゼロと同時か?」

「……隠しているのに、どうしてわかる?」

「そりゃ、お前が動いている場所が限定されているように感じられたし、ゼロがこの世界を発動したタイミングがずっと不思議だと思ったんだよな」


 ゼロはアリスのことを日本人か確かめる為、暴れても大丈夫のように強固な世界にする為にと、この世界を作り出したと言っていたが、他に要因があったのでは? と考えてみると、レイがその能力を発揮できるようにと隠蔽の意味も隠されていたのかもしれないと思い立った訳だ。他に理由もあり――――




「ステータスには明記されていないが、俺の眼は特殊でね。魔力、魂を色で見分けることが出来る眼があるのさ」

「魔力と魂を色で……?」

「そう、ゼロが作り出したこの世界とお前が作った結界の色が似ていたから、気付くの遅れたがな」


 アリスの眼にはゼロが作り出した世界は、全てが蒼くなっているのが映っていた。そして、レイの作り出した結界は薄い青で東京ドームのように自分達を包んでいる。


「その色が見えている眼には、お前がドームみたいな結界から一度も出ていない。これだけ動いていたのにな?」

「……だから?」

「もうわかっているんだよ。その能力はこの結界内でしか発動出来ない。そして、ゼロもその範囲に入っていることから、魔力の供給はこの結界で行われている。それか、お前の能力はゼロが持っている『理想神エデン』、その能力に繋がりがあるんだろ?」


 その話を聞いたレイは静かに舌打ちをしていた。アリスが出した答えは殆ど合っていたからだ。そう、レイが使っている察知できない転移のような動きは、ゼロが持つ『理想神エデン』によるお陰である。正確には、『理想神エデン』の派生である、王者能力の『理想王オルタ』をゼロから貰っていた。

 『理想王オルタ』は王者能力だが、近くに『理想神エデン』を使えるゼロがいなければ、発動出来ないピーキーな能力である。能力の効果は『理想神エデン』に似ているように、理想を現実に変える力だが、理想結界の中でしか発動できず、現実に変える事が出来る範囲は物凄く狭い。更に、魔力も大量に喰う。だから、ミディより魔力が少ないレイは常にゼロから魔力を供給されながら、戦うことにしているのだ。

 内心では呻っているレイを他所に、アリスは自分が思い立った推測を話していく。


「理想を現実に変える力だったな。『理想神エデン』の能力は。つまり、お前が使っている能力は魔力の色から考えてみれば、類似なる能力なのは間違いない。そこから考えれば――――自分の位置を理想する場所に移すことが出来るか? いや、それでは転移とは変わらないな。なら、既にそこにいること・・・・・・・を理想にしたってとこか」

「っ!?」


 正解だった。こんな短時間で正解を言い当てられたことに衝撃を受けるレイ。離れた場所で聞いていたゼロも驚いていた。その表情を見たアリスは自分の推測が当たっていたことに理解する。


「当たったか」

「……厄介ね。その色が見える眼と智謀なる頭。そして、その強さがあれば、全ての世界を破壊するのは難しくないかもね……」

「違う。俺は世界を破壊したい訳でもない。ただ、全ての人類を消したいだけだ。そこを間違えるな」


 アリスは世界丸ごとを破壊したい訳でもない。人類以外に生きている生物もいるのだから、世界ごと破壊しようとは考えてはいなかった。人間を消す際に、巻き込まれたなら仕方がないと思うが、わざわざ人類以外の生物を消しに行こうとは思わない。


「……それでも、貴方を止める!」

「無駄だ。お前の力は既に見破っただろ?」

「……だが、捉えるのは出来ない!!」

「はぁ、その能力を破る方法はある。まず、一つ目は――――」


 アリスは手を差し伸べる。しかし、その方向は、レイへは向かっておらず、横へ指し伸ばされていた。そこには――――


「……お兄ぃを狙うつもり?」

「そう、それが一つ目だが――――」


 アリスが無の攻撃をゼロに向かって放つが、ゼロは全く動けない訳でもないので、レイがやっていた同じ動きで避けていた。


「やっぱりな。お前が使えて、ゼロが使えないと言うのはないか」

「……わかっていて、試したの?」

「こういうことは、話すより見せた方が早いだろ? そして、二つ目は……」


 アリスもゼロとレイがやっていた動きをして、レイの懐に入っていた。既に放たれた拳を避ける事も出来ず、腹へ減り込まされていた。手加減していたのか、レイは致命傷になるような傷にならず、吹き飛ばされるだけで終わった。


「似たようなことで近付けばいいだけさ」

「レイ!?」

「……ごほっ、ごほ、だ、大丈夫だから」


 咄嗟にゼロが動こうとしたが、吹き飛ばされていたレイが空中で止まり、手を出して止めていた。


「……なんで、無の攻撃をしなかったの?」

「説明の途中だから、最後まで聞くこともなく殺されるのはつまらないだろ?」


 アリスの気紛れで、レイは腹にただの拳による攻撃で済んだようだ。もし、無の攻撃をされていたら、間違いなくレイは死んでいた。だから、次からはさっきのように近付かれても、避けれるようにと警戒をしなければならない。


「……さっきのは、私達と同じじゃない」

「そうだな。だから、似たような事は出来ると言ったんだよ。俺が出来る範囲での、応用を行ったに過ぎないさ」

「……」


 察知が出来なかったことから、転移ではないぐらいはわかるが、どうやって出来たかまではわからない。わかるのは、もうレイを捉えるのは難しくはないという事。これで、レイが一気に不利へ陥ったことになる――――










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