第六十五話 青龍&玄武
はい、続きをどうぞ!
白虎が押されているのを見てか、さっきまで塔から離れなかった青龍と玄武が動き始めた。オーラス殿下もその動きを見て、こちらも勇者を投入した。『黄金の勇者』と『黒竜の勇者』がその二体を相手に立ち向かう。『黄金の勇者』、ゼルクは黄金で出来た鎧を着ており、キラキラとしたイケメンである。だが、鎧は黄金色だが、材料が金ではなく、能力によって強化された状態なのだ。
「私の能力で聖騎士達を強化しましょう。『金成者』発動」
『金成者』が発動され、ゼルクの周りにいた聖騎士達もゼルクと同じ黄金色の鎧や剣になって、強化されていく。Aランク程度の魔物ならゼリーのようにスルリと切れるようになり、防御面では打撃や斬撃の攻撃に強くなった。ゼルク本人も実力が高いので、聖騎士と混じって玄武へ向かう。
『黒竜の勇者』、ロイはパートナーである竜のビアドと共に青龍へ挑む。黒い槍を持ち、青龍の身体を穿とうと突きを放つが――――
『ビアド! 上に向かえ!!』
『父さん!?』
突然にリントを乗せたガロがビアドの尻尾を掴み、上へ上昇しようとしていた。ビアドは驚きながらも、攻撃を中断して父親であるガロの言う通りに上へ向かった。そのビアドの下を何かが通ったのを感じ取っていた。乗っていたロイも青龍へ向かうのを中断されたことに眉を潜めたが、下を見ると納得していた。
「透明な刃が全身に付いていたのか」
『長さが三メートルはあるぞ!?』
遠くからはわからなかったが、近付くと薄っすらと見えるようになった。今の青龍は透明の刃を身体にくっ付けている状態だったのだ。胴体から伸びているのが数十本に、両手の甲からも透明の刃が伸びていた。もし、それを知らずに突っ込んでいたら、青龍は何をせずともロイとビアドは刻まれて倒れていた可能性があった。
「透明だからいいけど、見えていたらムカデっぽいよなぁ」
『リント! ふざけている場合じゃないぞ!』
気の抜けるようなリントの言葉にガロが怒鳴る。今は戦争中なのに、リントはいつも通りだった。ロイとビアドはそのリントに呆れつつも、青龍への警戒も忘れない。
「ビアド、炎を!」
『ゴガアァァァァァ――――――――!!』
ガロがら受け継いでいる黒い炎を吐き、遠距離からダメージを与えようとしたが、青龍は動き回りながら、全身の刃を使って強力な風を起こして押し返していた。
『動いただけで押し返される!?』
『まだ弱いわっ!! ゴガアァァァァァ――――!!』
ガロも加勢し、黒い炎を足して風に負けないようにした。だが、青龍は風を起こすのを止めて下へ避けてこっちへ向かってくる――――と思っていたが、なんと玄武と相対している黄金の聖騎士へ攻撃を仕掛けていた。
「チッ! こっちは無視か!」
『あわわ、ガ――――』
『馬鹿者! 炎を吐くな!! 味方を巻き込むだろ!?』
『っ!?』
思わず、下へ向かって炎を吐こうとしたビアドだったが、ガロに止められて手で口を押さえてしまう。ビアドは戦争に出たこともあるが、殆どは周りに味方がいない状況ばかりで戦っていたので、集団戦での戦いには慣れていなかった。
「おい! 空の敵を何とかしろ!!」
「――――仕方が無い、『竜戦士』を使う!」
『わ、わかった!』
出来るだけ消耗はしたくなかったが、そう言ってはいられないと思ったロイはスキルを使う事にした。『竜戦士』を発動し、ロイとビアドは融合した。ロイの身体を媒体に、黒い鱗が浮き出て額に黒い角が現れ、背中から立派な翼が生えた。
その姿は人型の竜そのものだった。
「数十秒で終わらせてやる!!」
その姿でいられる時間は決まっているので、後の戦闘もあるので数十秒で決めると豪語する。青龍は透明な刃で聖騎士を切り裂いて玄武を助けていたが、変わった気配に本能は反応した。
浮いているロイに向けて、全身から刃を飛ばすが、ロイの持つ槍で弾いていく。今のロイは人間の反応を越えており、竜よりも濃縮された強さを発揮されている。
青龍は刃が通じないと理解したのか、相手をするのやめて、再びに玄武のサポートを始めていた。しかも、玄武の方も青龍の動きに合わせて、大技を発動するような気配を発し始めた。
『ゴオォォォォォォォォォ――――』
玄武の口に濃厚な魔力が集中していく。強力な魔力弾を放とうとしているようで、その攻撃をさせてしまえば、ここにいる兵士達が半分以上も消え去ってしまうのは理解出来ていた。それを止めようとする聖騎士達とゼルクだが、青龍に邪魔をされて大したダメージを与えられないでいた。元から強固に作られた玄武は斬られた程度で傷つくような身体をしていなかった。強化された剣であっても、たった数十撃程度では致命傷を与えられない。
その戦況を見ていたオーラス殿下は采配を間違えたと感じていた。硬い敵には攻撃力が高い『浮浪の勇者』をぶつけるべきだった。だが、そのユアンはまだ白虎と相対していた。ユアンを呼び寄せて相手を変わらせてやればいいが、もう魔力弾を発射しようとする玄武の姿があったので、采配を間違えたと感じて後悔していた――――
だが、その魔力弾は発射されることはなかった。
「ここは僕の出番かな。一之太刀『両断』!」
ガロに乗っていたリントがユアンの使っていた技で首を切り落としていたからだ。リントは既に剣を振っていた状態で玄武の首を上手く切り落とせたことに満足していた。あっさりと首を落としたことに呆気に取られるオーラス殿下だった。ガロはリントが使える能力のことを知っていたが、これだけの成果を出せることに驚いてはいた。
『あっさりと出来たのだな……』
「うーん、イメージが上手く出来ていたからかな。実際に見たことがあるのも助けになったな」
『そうか……やはり、お主の能力はチートに近いぞ?』
「チートという言葉を良く知っていたね?」
リントとガロが話している間に、ロイも青龍を槍で貫いていた。青龍は玄武程の硬さは無く、本来はサポートをする実力しかなかったからなのか、あっさりと貫けたのだ。
そして、同時に白虎もユアンに刻まれて再生も出来ない程のダメージを受けて倒れていた。
これで四体の内、三体を倒して残りは朱雀だけとなった――――




